「NFVは、回線交換からパケット交換への変化に匹敵」
NFVとはネットワーク機能の仮想化のことだが、ホフマン氏はNFVについて「Webの世界で使われているクラウドの技術を、テレコムの世界に取り入れるもの」と説明する。
NFVの概要 |
Webの世界では、突発的にアクセスが急増しても、AWSなどのクラウドを活用することで瞬間的にサーバーリソースを増やすことが可能だ。「キャリアは『これと同じことがネットワークで出来ないか。シームレスにスケールアウト/スケールインしたいんだ』と言う」
現在のキャリアネットワークは、特定用途向けの専用ハードウェアアプライアンスの集合体だ。瞬間的に、リソースを増やしたり減らしたりすることはできない。もし現在のアーキテクチャで想定外に対応しようとするならば、思いつくかぎりの想定外に対応できるだけの膨大な専用アプライアンスをあらかじめ用意しておくほかないだろう。しかし、そんな無駄な投資ができるキャリアなど当然ない。
ところが、NFVで事態は変わる。ネットワーク機能が専用アプライアンスから分離され、汎用サーバー上で実現できるのであれば、サーバーリソースさえ十分に用意しておき、その時々の想定外に合わせて必要なリソースを柔軟に割り当てることが可能になるからだ。「NFVでネットワークの作り方に革命が起きると言っていい。私は、回線交換からパケット交換への変化に匹敵する激変だと考えている」
ただ、NFVにも課題はある。それは、「Webの世界とテレコムの世界には根本的な違いがある」からだ。1つは、Webの処理がトランザクションベースなのに対し、テレコムはセッションベースであること。「Webであれば、ステート情報は維持しなくていい。しかし、ネットワークは違う。進行しているセッションや呼のステートを維持する必要がある」。もう1つは、レスポンスに対する要求条件の違いだ。Webであれば数秒かかっても許されるが、テレコムの世界では「20~30ミリ秒単位で応答しないと、呼は途切れてしまう」。
そこでテレコムの世界の場合、遅延やリソースの利用効率をさらに最適化できるよう、ネットワークのトポロジや輻輳状況などネットワークの状態に合わせて、適切なロケーションに仮想ネットワーク機能を配置することが重要になるという。そして、ホフマン氏によれば、「この最適化のためのアルゴリズムが、NFVソリューションの差別化ポイントになる」とのことだ。
最大リンク利用率とはリソースの利用効率のこと。数字が低いほど、利用効率は高い。グラフ内の一番右の「NetBalance-12DC」がベル研究所/アルカテル・ルーセントのアルゴリズムを適用した場合で、ネットワークの状況を考慮しない「ランダム」より優れた結果が出ている。一方、遅延については、近接データセンターに仮想ネットワーク機能を配備する「近接-12DC」を5ms下回っているが、何を優先するかはもちろんチューニング可能とのこと |