スマートフォンやタブレット端末の業務利用の増加により、社内の情報にどこからでもセキュアにアクセスでき、大容量かつ大量の画像・動画コンテンツを保管し共有できる装置が求められており、NAS(Network Attached Storage)に注目が集まっている。
NASとは、ネットワークに直接接続して使用するファイルサーバーアプライアンスだ(図表1)。ハードディスクとネットワークインターフェース、管理システム(OS)を一体化しており、外付け型HDDとは違ってWebインターフェースによる一元管理ができる。アクティブディレクトリを利用した詳細なアクセス権の設定や、異なる種類の複数のサーバーからのデータの共有を容易に行える。業務ファイルのストレージとしてだけでなく、監視カメラシステムの管理、データセンターにおけるサーバーの負荷軽減など幅広い用途で使われており、グローバル規模で市場は成長している。
図表1 NAS接続例 |
世界的な市場拡大の要因はモバイルデバイスの業務活用だ。企業ネットワークに接続するデバイス数、データ量の急増により、処理性能の向上とストレージ拡大の必要が生じたからだ。オフィスのネットワークに接続すれば、すぐに運用できる点も導入を促進している。
相次ぐプレイヤーの参入
日本市場でNASといえばコンシューマ/法人向けともにバッファローやNETGEAR、アイ・オー・データなどが主流だが、近年はグローバル市場を基盤とするQNAP(キューナップ)やSynology(シノロジー)、Thecus(シーカス)など台湾ベンダーが相次いで参入している。QNAPをスピンアウトしたエンジニアが昨年興したASUSTOR(アサスター)も既に参入している。
プレイヤー数が増えたことで起きた競争で性能向上と価格がこなれ、導入もしやすくなっている。例えばQNAPのSMB向け「TS-469Pro」は本体価格8万3000円に市販の2TBのHDD4本を足して約11万円ほどで導入できる。
ただ、日本参入については、QNAPの日本正規輸入代理店ユニスター第二法人営業部長の齋藤敬氏は「新規参入はハードルが高い」という。低価格で最新機能を提供できても、知名度と実績に加え、ホームページやカタログのローカライズが完了していることが前提となる。まずは販売代理店とパートナーを組んで、メインターゲットであるSMB(中堅・中小企業)市場で攻略に道筋をつけ、次にSOHOやエンタープライズにも広げていくという。知名度では劣るものの、製品には各ベンダーとも自信を持っており、既存NASとの買い換え需要も狙っていく意欲をみせている。
ここでは、日本市場での存在感を強めている台湾ベンダーの製品の特長と活用シーンを紹介していく。NASの本来の役割であるデータの読み書き速度やファイルのアクセス制限など、基本的な機能は成熟しており、ここでの差別化は難しいとされる。ベンダーは機能の充実や拡張性、RAID(※1)管理サポート、システムエラー対応などの信頼性の強化をすることで差別化を図っている。
※1 RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)
複数のハードディスクを一台の装置とみなして管理する技術。データを複数の装置に分散して記録することで、高速化や冗長性を持たせる