マルチベンダーで顧客ニーズに対応
――エンタープライズ向けについては、どのような取り組みを進めていますか。
猪腰 法人向けスマホや業務用タブレットの通信費は企業にとって大きな負担となるため、自由自在2.0プランをはじめとする格安SIMサービスを通じて、通信コストの削減を支援しています。また、SIM単体だけでなく、iPadなどのデバイスとセットで提供することで、導入・運用の手間を軽減しながら、さらなるコスト低減につなげています。
通信やデバイスを活用したソリューションの展開にも注力しています。例えば、外国人観光客が多く宿泊するホテル向けに、クラウド型翻訳サービスと通信を組み合わせたソリューションを提供しています。
――こうしたソリューションは、他のICTベンダーらと競合する可能性もありますが、どのように差別化を図っていきますか。
猪腰 HISモバイルのユニークさは、“通信商社”として幅広いサービスを提供できる点にあります。「通信を使って何かを実現したい」というお客様のニーズに応えるため、多様なサプライヤー・プレイヤーとパートナーシップを結び、代理店のような役割を担っています。
例えば近年、「監視カメラの映像をリアルタイムにモニタリングしたい」といったニーズが高まっていますが、利用状況はお客様ごとに異なり、稼働の多い時間帯やクラウド等へアップロードするデータ量も様々です。当社であれば、ベンダーにとらわれず、最適なハードウェアと通信サービスを組み合わせて提案することができます。
また、特定のエリアで通信キャリアAの回線がつながりにくい場合には、通信キャリアBのサービスを提案するといった柔軟な対応も可能です。複数ベンダーのサービスを扱えることこそが、当社の大きな強みです。
――今後の目標についてお聞かせください。
猪腰 コンシューマー分野では、先ほど申し上げたHISグループのアセットを活かし、自社サービスの付加価値向上を図ります。また、日本人旅行者の利便性を高めるため、自由自在2.0プランでは海外ローミングやeSIMにも対応しています。こうしたサービスを軸に、個人顧客の開拓を進めていきます。
エンタープライズ向けには、HISグループの観光事業と連携し、旅行者体験の向上やスタッフ業務の効率化を実現する観光DXソリューションを拡充していきたいと考えています。これらの取り組みを通じ、2030年までに売上100億円を目指します。
図表 HISモバイルのエンタープライズ事業














