社内SNSは「過度な期待」のピーク期から幻滅期へ
このように社内SNSの導入は広がっているが、一方で社内SNSの導入に失敗する企業も続出しているのが実態だ。ガートナーの調査によれば、社内SNSの導入成功率はわずか10%。10社に9社は社内SNSで失敗しているというのだ。
社内SNSの利用率は16.5%というIDC Japanの調査結果を先ほど紹介したが、実は利用率自体は2012年からほぼ横ばいと増加していない。社内SNSを新たに導入する企業が増える陰で、社内SNSを導入してみたものの、うまく活用できずに利用を辞めてしまう企業も数多くあることが、この結果からは推測できる。
図表2 企業内ソーシャルネットワーキングシステムの利用状況(出典:IDC Japan) |
ガートナーは新しいテクノロジをいつどこに導入すればいいかを示す指針として「テクノロジのハイプ・サイクル」を発表している。今年10月に発表された「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル」では、社内SNSは「過度な期待」のピーク期を過ぎ、幻滅期に向かっているとされた。
その理由についてガートナーは、「ピーク期に多くの企業が社内コミュニケーションの活性化のために漠然と導入してはみたものの、一部の参加者が趣味や遊びなど特定の話題に終始し、企業の改善活動のベースとなる「談論風発」ツールとして根付くまでには至っていない」と説明している。
確かに社内SNSは企業にとって一般的なコミュニケーションツールになろうとしているが、同時に今、“壁”にも直面しているのである。
社内SNS導入に成功パターンはある!
ただ、面白いのは、社内SNS業界にとって“不都合な真実”ともいえる導入失敗率の高さを、むしろ積極的に周知している社内SNSベンダーも少なくないことだ。
その狙いは他でもない。失敗率の高さを知ってもらうことで、社内SNSの導入失敗をできるだけ防ぐことにある。
社内SNSの導入ハードルは非常に低い。無償プランを用意している社内SNSベンダーも多く、無料で始めることも可能だ。さらに、普段プライベートでFacebookやLINEなどに慣れ親しんでいる気安さもあって、「とりあえず入れてみよう」とあまり事前準備をせずに社内SNSを導入してしまう企業は多い。しかし、これが大きな落とし穴である。無計画な社内SNS導入は、典型的な失敗パターンの1つだ。「社内SNSの導入がうまくいかなかった90%の企業のうち、80%は最初の始め方で失敗している」(ソニックガーデンの藤原氏)
図表3は、セールスフォース・ドットコムのChatterを導入する企業に導入効果を聞いてまとめたものだ。社員間の連携向上やアイデアの創出、ミーティングの削減など、社内SNSが定着した企業は、すでにこうしたメリットを享受している。その一方で、90%の企業は社内SNS導入に失敗し、ソーシャル技術がもたらす“果実”をみすみす逃してしまっているのである。
図表3 Chatterの導入効果(出典:セールスフォース・ドットコム) |
社内SNS導入の失敗パターンと成功パターンはかなり見えてきた――。それが多くの社内SNSベンダーに共通する意見だ。つまり、大切なのは、失敗パターンと成功パターンをきちんと学んだうえで、社内SNSの導入を行うこと。次回からは、社内SNS導入を成功させるためのポイントを具体的に紹介していくことにする。