医療と介護をつなぐモバイル(2)――BYODも取り入れた新宿区の地域医療連携チーム

超高齢社会を迎えた日本で今後重要性が高まる「在宅医療」――。患者の自宅で医療を行う在宅医療においては、生活支援・介護ヘルパーなどとの連携が大切だが、そこで課題となるのが情報共有だ。新宿区地域医療連携チームではBYODも取り入れながら、スマートデバイスとサイボウズLiveで情報共有を図っている。

新宿区では、区内の病院や診療所の一部が「新宿区地域医療連携チーム」を結成し、牛込・四谷地区の高齢者に対し在宅医療と介護サービスを提供する「地域包括ケア」の実現に向けた取り組みを推進している。

メンバーには東京厚生年金病院地域連携・総合相談センター溝尾朗部長、フジモト新宿クリニック(藤本進院長)など約30の診療所や居宅介護支援事業所が名を連ねる。デイサービスや福祉用具のレンタル・販売、介護従事者の育成研修など福祉関連事業を幅広く手がける日本化薬メディカルケアは、事務局として参加している。

日本化薬メディカルケア 代表取締役 宮野茂氏
日本化薬メディカルケア 代表取締役 宮野茂氏

同チームは大病院と在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、ケアマネジャーが相互に連携して情報を共有する目的から、2011年10月に「<医療・介護>モバイル連携システム」を運用開始した。

KDDIのクラウド型グループウェア「KDDI Knowledge Suite」を使い、医師や看護師、ケアマネジャーの往診・訪問予定のスケジュール、写真や動画による治療・看護・介護の記録、退院時の診療情報などを共有する。端末にはAndroidタブレット「MOTOROLA XOOM Wi-Fi」、屋外での利用にはデータ通信端末「Wi-Fi WALKER DATA06」を採用、関係者だけでなく患者宅にも設置することで、テレビ電話のように看護師やケアマネジャーと連絡を取り合える体制を実現した。

システム構築の際に重視したのが、使い勝手とセキュリティだ。スマートフォンやタブレットの操作に不慣れでも使いこなせるよう現場の意見も取り入れ、KDDI Knowledge Suiteのメニュー項目を限定したり、アイコンを大きく表示させるなど、わかりやすく簡単に操作できるシンプルなホーム画面を開発した。それでも、タブレットに不慣れなメンバーもいるため、関係者全員が使い方を習熟するまでには時間を要したという。

セキュリティについては、暗号化やユーザー認証で情報の秘匿性を確保した。また、グループウェアのアカウント登録と権限設定では、複数の患者に対して担当者登録できる一方、患者ごとの担当者グループ内でのみ情報共有することで、担当外の患者情報は閲覧できないシステム構成とした。

「情報漏えいの原因は、誤った送り先に送信してしまったり、端末を紛失するなどのヒューマンエラーにあることが多い。関係者しか情報を閲覧できない仕組みは漏えい防止に非常に有効」と日本化薬メディカルケア代表取締役の宮野茂氏は語る。

月刊テレコミュニケーション2013年9月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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