ワークスタイル変革Day UCサミット2013レポートNEC神谷氏「UCはオフィスだけでなく顧客接点の現場にも広がっている」

ユニファイドコミュニケーション(UC)のニーズは一般オフィスだけに留まらない。病院やホテル、空港といった顧客とのコミュニケーションが行われる現場でも導入が進んでいる。9月10日に開催された「UCサミット2013」で、NECの神谷健一氏は業種別のUC活用事例を数多く紹介した。

UCで高齢者を“見守る”

地域顧客とのコミュニケーションでは、鹿児島県三島村の事例を取り上げた。三島村は3島4地区からなる人口約340人の村で、村民の40%は高齢者である。各地区に出張所や診療所、学校はあるが、村役場は行政区域外(鹿児島市内)にあり、交通手段はフェリーのみという環境。しかし、「各家庭までFTTHが敷設されており、ITシステム導入へのモチベーションは高い」という。

三島村では、村役場にいる保健師と看護師が、遠隔地から定期的に高齢者の体調を確認する「見守りシステム」を導入している。高齢者宅にカメラ内蔵のタブレット端末とハンドセット、無線LAN機器を設置。保健師と看護師、高齢者宅を訪問するヘルパー、診療所の医師に管理端末が用意され、高齢者を見守れる仕組みだ。

三島村が導入している見守り機器
三島村が導入している見守り機器

高齢者が利用しやすいように、操作画面はタッチパネルを用いたシンプルなものになっているのが特徴である。そして、「見守るだけでなく、端末を操作することによる脳の活性化や介護予防としても有効」と神谷氏。高齢者からは「いつでもつながる安心感がある」「これまで無縁だったIT機器を使うことで良い刺激になっている」といった声が上がっているそうだ。

ARで観光客の集客に貢献

地域顧客とのコミュニケーションでは、自治体による観光AR(Augmented Reality:拡張現実)の導入事例も紹介された。ARとは「コンピュータを用いて現実世界を補う“何か”を追加し、目の前にある現実以上の情報を提示する技術のこと」(神谷氏)だ。

沖縄県南風原町では、スマートフォン向けARを駆使した観光アプリサービスを展開している。

その仕組みだが、観光客がスマートフォンにARアプリ「南風原町観光なび」をインストールすると、スタンプラリーのコースが複数表示される。コースを選択してコースマップで目的地を確認したら、スマートフォンをかざしながら目的地へ向かう。

すると、画面上に目的地の方向などが書かれたエアタグ(カメラを通じて風景に仮想的に添付できる情報)が表示。その方向に向かって進めば、スマートフォンのカメラで撮影することで入手できるスタンプが用意された場所にたどり着け、すべてのスタンプを集めれば景品と交換してもらえる。

南風原町のスマートフォン向けARの概要
南風原町のスマートフォン向けARの概要

南風原町観光なびは日本語だけでなく、英語と中国語、韓国語にも対応。外国人観光客の集客にも貢献しているという。

案内システムで海外からの渡航者をおもてなし

施設内の顧客とのコミュニケーションについては、空港とホテルの例が紹介された。

まずは成田国際空港(成田空港)の事例。成田空港では、案内カウンターにテレビ電話案内システムを導入した。その背景にあったのは、案内業務の多言語化が進んでいたことだ。コールセンターの設置も考えたが、新たにオペレーターを養成するのはトレーニング面とコスト面で難しい。また、一部のカウンタースタッフはすでに多言語スキルを持つが、すべてのカウンターにそういったスタッフを配置するのは困難だった。

そこで考えたのが、離れたカウンターのスタッフ同士が案内システムを利用して相互に支援し合い、人的リソースを有効活用すること。例えば、Aカウンターに中国からの旅行客が相談に来たものの、あいにく中国語を話せるスタッフがいなかった場合、Webカメラが付いたタッチパネル式の案内システムを活用してBカウンターの中国語を話せるスタッフと会話してもらう。

成田空港の事例の概要
成田空港の事例の概要

案内システム導入の効果として挙げられたのは、海外渡航者へのおもてなしによる顧客満足度の向上や、カウンター業務の効率向上である。稼働後3カ月で、月間1500の利用件数があったという。

タッチパネル式IP電話機で宿泊客のリクエスト受け付け

ホテルの事例として紹介されたのは、2010年開業の高級ホテル「Mandarin Oriental Macau」(中国・マカオ)における客室用タッチパネル式IP電話機のケースだ。すべての客室に設置して客室サポート端末として活用。宿泊客は、大画面のタッチパネルを通して、様々なサービスを頼むことができる。

また、中国・上海にある高級ホテル「InterContinental Shanghai EXPO」も、すべての客室にNECのタッチパネル式IP電話機を設置し、ワンタッチでホテルのサービスやインフォメーションにアクセスできる環境を整えているそうだ。

「ホテルでの次のトレンドは、客室でのタブレット端末の活用だろう。ホテルに限らず、NECは今後もさらに業種別UCソリューションを拡充していく」と神谷氏は話し、講演を締めくくった。

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