HAPS(High Altitude Platform Station)技術の研究開発を進めるソフトバンクが、機体に搭載する大容量ペイロード(通信機器)を新たに開発し、上空からの5G通信実験に成功した。
同社はこれまで、HAPS機体と通信機器、そして機体の飛行に必要な太陽光パネルや電池等を開発。すでに成層圏でのフライトと通信にも成功している。今年6月には、2026年中に「プレ商用サービス」を開始する計画を発表した(参考記事)。
今回の実証実験は、端末と機体をつなぐ「サービスリンク」にこれまで開発した要素技術を活用しつつ、HAPSと地上局を結ぶ「フィーダリンク」装置を結合させた新たな通信ペイロードを使って行われたものだ。ソフトバンク テクノロジーユニット統括 基盤技術研究室 無線技術研究開発部部長の星野兼次氏は、「HAPSのネットワーク構成には、サービスリンクとフィーダーリンクの両方の開発が不可欠」と、その意義を強調した。
HAPSのネットワーク構成
サービスリンクの主要3技術を開発
高度約20kmの成層圏を飛行するHAPSから地上の端末へ、どのように安定した通信サービスを提供するのか。星野氏は、サービスリンクの主要な要素技術として次の3つを挙げた。
1つめは「フットプリント固定技術」だ。
HAPSは旋回して飛ぶので、それに伴って無線基地局がカバーする通信エリア(フットプリント)が移動する。地上の端末が動かない場合でも、フットプリントが移動することでハンドオーバーが頻発したり、受信レベルが不安定化するおそれがある。
フットプリント固定技術
そこで、ソフトバンクはこのフットプリントを固定化する「シリンダーアンテナ」を開発した。側面に複数のアンテナ素子を配置し、デジタルビームフォーミング制御を行うことで、機体が動いても通信エリアを固定できるという。係留気球を用いたフィールド実証で、その効果も実証済みだ。