「ITとは、かなりかけ離れていた仕事の仕方をしていた」――。現イオンリテール社長の梅本和典氏が、イオングループのファシリティ会社、イオンディライトの社長に着任したのは2011年5月のこと。もともとイオングループのIT責任者を務めていた同氏の目には、イオンディライトのIT化はだいぶ遅れていると見えたそうだ。
だが着任から2年、現在では「IT装備率のかなり高い会社に変身することができた」という。
7月23日に行われたソフトバンクグループのイベント「SoftBank World 2013」での梅本氏の講演から、イオンディライトのワークスタイル変革の取り組みを紹介する。
最大の目的は「営業活動時間」の創出
イオンディライトは、日本最大の総合FMS(ファシリティマネジメントサービス)企業である。売上高は2489億円で、従業員数は約9000名。国内だけにとどまらず、中国・マレーシア・ベトナムにも進出している。
イオンディライトの会社概要 |
梅本氏がITを活用したワークスタイル変革を急いだのは、ファシリティ業界の今後に対する次の読みもあったからだという。「ファシリティの世界も、これからはIT企業がおそらく最大の競争相手になるだろう」。ファシリティ分野への攻勢を強めるIT企業に対抗するためにも、「いかに早くIT装備率を高くし、競争力を付けていくか」は喫緊の課題だった。
ワークスタイル変革に取り組むうえで掲げたコンセプトは「どこでもオフィス」である。「9000名ほどの従業員がいるから、分かり易い概念化をしないといけない」と梅本氏はその理由を説明した。
イオンディライトのいうどこでもオフィスとは、「ロケーションに縛られない働き方」を可能にする業務環境である。従来は“固定されたデスク”に“固定されたPC”、“固定された情報”に縛られたワークスタイルだったという。
どれだけ縛られていたかを示すデータも紹介された。全国の支社の営業部員122名のPCログを分析したところ、業務時間の約7割は資料作成やメール閲覧といった社内業務にあてられていたことが分かったという。社外活動時間、すなわち営業活動にあてられていたのは33%に過ぎなかった。
「B2Bの仕事をしているから、お客様への営業時間をいかに増やしていくかが業績に直結してくる」
ロケーションに縛られない業務環境を実現することで、移動時間や待ち時間を有効活用できるようにし、営業活動時間を創出すること。これが、イオンディライトのワークスタイル変革の最大の目的である。