人間とAIエージェントが協働 完全自律運用でも透明性確保
コマーチは運用タスクの自律処理を高いレベルで実現しているが、「人間の判断を組み合わせ、運用の透明性を確保したいというニーズは多いです」と小出氏は述べる。
そこでコマーチは、人間とAIが協働するハイブリッドな体制を提案している(図表2)。障害対応の場合では、OSSがネットワークの状態を常時監視し、異常の兆候を検知すると、人間の操作によりAIエージェントを起動。すると、トラブルシューティングコーディネーターの役割を担うAIエージェントがタスクフォースを編成し、各エージェントが解決策を立案する。コーディネーターがそれを集約し、人間の担当者に提示。承認されれば、AIエージェントがソリューションを実行する。
図表2 AIチームと人間の判断を組み合わせたアプローチ
完全自律型の運用では、AIエージェントが処理全体を担うが、その場合でも人間による事後レビューが可能であり、透明性を維持できる構造になっている。
コンフィグ適用は仮想環境で試行 OSSデータでデジタルツイン構築
もっとも、インテントから生成されたコンフィグを商用ネットワークにそのまま適用すると、思わぬ影響や障害を引き起こす恐れもある。人間によるレビューで一定の安全性は確保できるものの、より確実な検証手段として必要になるのがデジタルツインの活用である。
「OSSはネットワークの構成情報やトポロジー、障害データなど、デジタルツインを実現するための情報をすでに備えています」と小出氏。こうした情報を用いて、実ネットワークを模した仮想環境を構築し、AIエージェントによる構成変更を事前に試すことが可能となる。
デジタルツインでは、ネットワークの変更や撤去といった各種シナリオによる影響を可視化するほか、疑似的にアラームを発生させ、仮想的に障害発生後の挙動を検証できる。これにより、インテントの入力が現実のネットワーク上でどのような結果をもたらすかを安全に確認できる。マルチベンダー環境でもネットワーク全体を俯瞰できることもコマーチのデジタルツインの強みだ。
コマーチはこうした運用高度化を通じ、通信事業者のビジネス変革を支援することを目指している。運用に携わる要員を戦略部門や新規事業にシフトし、収益構造を改善させることが自律化ソリューションの真の目標だ。通信業界に限らない。「コマーチのOSSは、電力・ガス・水道などのライフラインインフラへの活用も始まっています」とコマーチ カントリーマネージャーのウカシュ・ゼズラク氏が語るように、その適用範囲は様々な分野へ広がっている。
Comarch SA. VP Business Growth & Strategy APAC/コマーチ(株) カントリーマネージャー ウカシュ・ゼズラク氏
企業が5年後、10年後も競争力を保ち続けるために、コマーチは現実的かつ強力な選択肢を提供する。
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