アッパー6GHzが重要
6Gの運用周波数もパネルディス(NTTドコモ)がこう説明した。
ITU-R Working Party 5D議長/NTTドコモ 電波企画室 専任部長 新博行氏
「6Gを成功させるには、技術開発だけでなく、周波数をどうするかを、両輪として考えていく必要がある。すでに欧州や米国では6Gの周波数に関する議論が始まっている。周波数の検討にはかなりのリードタイムが必要となるので、2030年はまだ先だと考えるのではなく、早く動き出す必要がある」
クアルコムジャパン シニアディレクターの北添正人氏は「5Gまでは新たに利用可能となるグローバルバンドが、初期の議論の段階ではっきりしていた。しかし、6Gでは明確になっていない。その意味では国の政策が重要になってくる」と指摘。そのうえで、準グローバルバンドとなっている6.4~7.1GHzについて、「日本でも積極的な議論をしていただきたい」と述べた。
クアルコムジャパン シニアディレクター 北添正人氏
台湾の大手通信事業者、中華電信のチャールズ・リュウ氏は、「6Gでもカバレッジのために低い周波数帯が必要となるので、5G/4Gからの確実でスムーズな移行ポリシーと技術を確立する必要がある」とした。
中華電信(TAICSメンバー) 通信研究所 プロジェクトマネージャー チャールズ・リュウ氏
加えて6G用の周波数として関心が高まっている6~8GHz/14GHz帯を利用するための高度MIMOなどの技術開発や、衛星などとの周波数共用要件の確立が課題だとした。
ノキアのシモーネ・レダーナ氏も6~8GHzのアッパー6GHzをIMT用に確保することの重要性に言及。その利点として「Massive MIMOなどを活用して伝送ロスを補うことで、既存のマイクロセル基地局を再利用してカバレッジを確保できる」ことを挙げた。
ノキア Head of Architecture, Security and Automation Nokia Standards, Strategy & Technology シモーネ・レダーナ氏
6GとAIは深く相互関与
パネルディスカッションで最も多くの時間が割かれたテーマが、6GとAIの関係だ。
中村氏は「6GではネットワークとAIが相互に深く関与するとされている。AIとネットワークの融合が、どのように新たな価値やサービスを創出し、産業や社会に貢献すると考えているのか」と論点を設定。
XGMF 共同代表を務める東京大学の中尾彰宏教授は「テレコミュニケーションにAIが適用できるかについて、まだ懐疑的な見方をする人も少なくないが、一度動き出すと転がるようにAIがテレコムの中に入っていくはず。これが世界で標準化されるようになっていったら、我々はきちんとそれに向き合ってAIに投資をしていかなければいけない」とAIの重要性を強調した。
XGMF 共同代表/東京大学 教授 中尾彰宏氏
ノキアのレダーナ氏は、AIの普及によるトラフィックの増大は、通信事業者の収益機会を創出するほか、通信事業者はAIを活用することでネットワークを最適化したり、運用方法を大幅に改善できるとした。また、AIの利用拡大によるエネルギー消費の増大という課題については、通信業界全体で協力して取り組むべきと訴えた。
キーサイトのラゴサマン氏はAI活用の重要なポイントの1つとして、ネットワークのパーソナライゼーション、インテントベースのネットワークが可能になる点を挙げた。その結果、「通信事業者は収益向上を図れるだけでなく、高齢者向けサービスの展開など、社会的な価値を生み出すことができる」と話した。
クアルコムの北添氏は、周波数帯にかかわらず、無線ネットワークのエッジでのAIの適用によりネットワークの性能向上の自動化が見込まれ、通信事業者は「UX、サービス性の向上に注力することができるようになる」と語った。