NTTが熟練者ノウハウをAIで可視化、業務継承への活用目指す

セキュリティ事故対応やコールセンター業務などの熟練オペレーターは、培った経験に基づく判断プロセスから、問い合わせの要点を的確に見抜き、必要な情報を引き出し、適切な提案を導き出す。この判断プロセスを高精度で見える化する世界初のAI技術をNTTが開発した。熟練者レベルの自動応答の実現や新人教育などへの活用を目指す。

業務に精通した熟練者の技術・ノウハウを、いかにして次世代に継承するのか。高齢化と人手不足に悩む我が国において、これは喫緊の課題だ。

NTTが2025年8月1日に発表したAI技術は、セキュリティ事故対応やコールセンター業務における熟練者ノウハウの継承を支援し、この課題に対処しようというものだ。開発を手掛けるNTT社会情報研究所 社会イノベーション研究プロジェクトの山中友貴氏はオンライン記者説明会で、その背景と狙いを次のように語った。

「熟練者が問い合わせ対応を行う際には、暗黙的な判断プロセスがある。この判断プロセスを対話履歴のみから見える化する」

NTT社会情報研究所 社会イノベーション研究プロジェクトの山中友貴氏

NTT社会情報研究所 社会イノベーション研究プロジェクトの山中友貴氏

ここで言う「判断プロセス」とは、例えば「子どもと旅行に行きたい」という問い合わせに対して、旅行代理店の熟練オペレーターが「お子様が小さければベビーベッドが必要かも」と判断し、「お子様のベッドが必要ですか?」と確認するといったものだ。必要な情報を聞き出し、適切な提案を行うことでトラブルを解決したり、サービスの満足度を高めたりするこの判断プロセスを「フローチャート形式で可視化する」ことが、NTTが今回開発した新技術の狙いである。

本技術開発の背景と目的

本技術開発の背景と目的

なぜ、フローチャート形式にするのか。山中氏は次の2つを利点として挙げた。

1つは、解釈性が高いこと。人間が見やすい形式であるため、対話履歴からAIが自動抽出した結果を人間がチェックしたり修正したりすることが容易になる。

2つめは、用途の広さだ。これも、人間が理解しやすい形式であることから、新人オペレーターへの業務ノウハウ継承に用いたり、熟練者の判断プロセスをLLM(大規模言語モデル)に取り込むことで自動応答システムを構築。問い合わせの品質向上や効率化が期待できる。

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