3つの自社開発アプリで業務効率大幅アップ
さらに、工事現場での作業を効率化するため、3つのアプリを自社開発した。その1つが「車両運行管理システム」だ。
「プレストレストコンクリート工法を行う工事現場には、ミキサー車や廃棄物を載せるトラックなど、多くの大型車が出入りする。そのため上手に管理しないと、こうした大型車が工事現場に入り切らない状態になりかねない」(管理本部 情報システム部 グループリーダーの吉川充洋氏)という。そこで情報システム部は、iPhoneを活用してこの課題に対処することにしたのだ。
車両運行管理システムは、次のような仕組みになっている。
車両運行管理アプリをインストールしたiPhoneを大型車のドライバーに貸与。車の発進と同時にアプリを起動すると、GPSによってリアルタイムの位置情報がシステム側に送信される。一方、ピーエス三菱の工事担当者側では、同じ車両運行管理アプリで、その大型車の現在地や付近の交通情報などを把握できる。このため工事担当者は工事現場の状況等に応じて、大型車のドライバーに「あと1時間どこかで待機してください」などと指示を送ることができるのだ。
自社開発アプリ「車両運行管理システム」の画面。赤いピンが大型車の現在地を示している |
2つめのアプリは「コンクリート打設管理システム」である。
工事現場では生コンクリート(生コン)が固まらないよう、定期的に攪拌する必要がある。だが、どのくらいの間隔で攪拌するのが適切なのかは生コンの量や水分量、湿気、気温などによって変化する。従来はベテラン社員の経験と勘に頼っていたが、このアプリに生コンの量や水分量などの数値を入力することで、いつ攪拌すればいいのかが容易に分かるようになった。
3つめのアプリは「養生管理システム」だ。生コンに関してはもう1つ、乾かないように定期的に水を撒く必要もある。養生管理システムは、測定器で生コンの温度などを測り、水分量が少なくなるとiPhoneにアラームを送信する仕組みだ。この作業も従来はベテランが経験と勘を頼りに行ってきたが、アプリができたことで若手でも行えるようになった。
ピーエス三菱は、これら3つの自社開発アプリにより業務効率と品質の向上を実現しているが、メリットはそれだけにとどまらない。公共工事の入札では、金額だけでなく、技術の優位性を示す技術点も評価対象になる。ピーエス三菱は、この3つアプリによって優れた工事を行えることをアピール。技術点を高めることで、受注件数を増やしていきたい考えだ。
iPad会議システムでペーパーレス化を図る
iPhone/iPadの活用にあたっては、セキュリティも重視している。KDDIのリモートアクセスサービス「KDDI Flex Remote Access」を導入し、電子証明書を用いた端末認証やワンタイムパスワードなどによる安全なリモートアクセス環境を構築。また、ニューソンのスマートデバイス向けコンテンツ変換ソリューション「InfoMesh Mobile(インフォメッシュモバイル)」を活用し、メールとスケジュール、ワークフロー以外の社内システムにはアクセスできないようにしている。
KDDIのMDM(モバイル端末管理)サービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager」も導入している。これにより、万一、iPhone/iPadが紛失・盗難に遭っても、遠隔操作で端末内のデータを削除できる体制を整えた。さらに、社内システムにアクセスするまでに、端末認証に加えて3回のパスワード入力を求めるなど、セキュリティ対策は万全と言えよう。
社内システムにアクセスするまでにはパスワード入力を3回行う必要がある |
NRIネットコムのiPad会議システム「モバイル会議」も現在テスト運用中だ。早ければ今年7月の役員会議から利用する予定だという。「ペーパーレス化で印刷作業にかかっていた時間と用紙コストを削減するとともに、環境保護に貢献したい」と管理本部 情報システム部 主任の丹羽謙太郎氏は話す。
ピーエス三菱では今後さらに自社開発アプリを充実させていきたい方針。特にコミュニケーション手段としての活用を強化していきたいという。また、当初から計画に挙がっていたWANのキャリア一本化についても検討が進んでいる。加えて、PBX機能をクラウドサービスとして利用できる「KDDI 仮想PBXサービス」の導入も視野に入れているそうだ。
このように先進的な取り組みを行うピーエス三菱。業界のリーディングカンパニーにふさわしいiPhone/iPadの活用法を実践していると言えるだろう。