ブロケード コミュニケーションズ システムズは5月22日、「オンデマンド・データセンター構想」に関する記者説明会を開いた。
ブロケードが新たに打ち出したオンデマンド・データセンター構想とは、「物理ネットワークと仮想ネットワークのそれぞれの利点を組み合わせ、データセンター内およびデータセンター間にわたる仮想化の拡張性を一層向上させる」というもの。これまでブロケードはイーサネット・ファブリックを筆頭として、物理ネットワーク製品を中心にデータセンター向けソリューションを展開してきたが、仮想ネットワークソリューションの領域にも大きく踏み出した。
それを象徴するのが、昨年12月に買収したVyatta社の仮想ルーターだ。今回、ブロケードの製品「Brocade Vyatta vRouter 最新リリース 6.6」としてリリースされた。
Vyatta vRouterの概要。無償のオープンソース版のダウンロード数は100万を突破。また、商用版の顧客も1500に達しているという |
Vyatta vRouterは、ハイパーバイザー上で動作するソフトウェア型の仮想ルーターである。「ハイパーバイザーごとに個別に最適化しているのが特徴。エンタープライズで使う分には、必要十分な性能を備えている」とSDNビジネス開発本部 執行役員の尾方一成氏は紹介した。
また、仮想ロードバランサー「Brocade Virtual ADX」も新たに投入する。ブロケードでは従来からハードウェア型のロードバランサー「Brocade ADXシリーズ」を提供しているが、これはそのソフトウェア版である。
Brocade Virtual ADXの概要 |
尾方氏は、「最近、Network Function Virtualization(NFV:ネットワーク機能の仮想化)がメディアなどで話題だが、我々もこのNFVの世界でソリューションを展開することになった」と説明。そのうえでNFVのメリットとして、初期投資コストの大幅削減、オンデマンドでのサービス稼動、マルチテナント環境の確立の3つを挙げた。
NFVの3つのメリット |
「今まで各ベンダーからハードウェアで提供されてきたルーターやスイッチ、ロードバランサー、ファイアウォールなどを、日々高速になっていくインテルベースのサーバー上で動かせば、もっと効率の良いシステムが作れるのではないか。専用ハードを使わず、ライセンスの追加のみでシステムが拡張できることにより、投資コストを大幅に削減していくという流れだ。また、ソフトウェアなので、あらゆるリモートのデータセンターに対して、オンデマンドで高速にサービスを稼動させられる。さらに、どのサービスプロバイダーでも課題になっているマルチテナント環境の確立にも貢献できる」
全ブロケード製品がOpenStackをサポート予定
会見では、このほかにもいくつかの新製品や新機能について説明が行われた。その1つである「Brocade Application Resource Broker(ARB) 2.5」では、ADXおよびVMware vCenterと連携し、1つのデータセンター内だけではなく、異なるデータセンター間での負荷分散も自動制御できるようになった。メインデータセンターのVMの負荷が増加すると、バックアップデータセンターに負荷分散するといったことが自動で行えるという。
ARB 2.5によるデータセンターをまたいだ負荷分散の仕組み |
また、すべてのブロケード製品が今後OpenStackをサポートする予定であることも明らかにされた。すでにBrocade VCSファブリックでプラグインが提供されているほか、ADX、Virtual ADX、Vyatta vRouterのプラグインも2013年秋に登場予定だという。