中堅企業へすそ野広がる社内SNS
さて、日本で社内SNS市場が立ち上がったのは2004年のことだが、6年を経過して今、社内SNSは普及のステージに入っている。図表2を見てほしい。このグラフは、社内SNSの利用人数を規模別に表したもの。母数は非公開であり、ここで示されている利用人数イコール社員数というわけではないが、社内SNSを導入している企業を規模別に見ることができる。やはりというか、最も多くを占めるのは、利用人数が「1000人~5000人未満」で全体の43%。社内SNS導入企業は大手企業が多い。だが、着目したいのは、「100人~500人未満」が2番目に多いシェアとなっていることだ。「100人未満」の利用人数で社内SNSを導入している企業も4%と少ないながら存在している。この2つを合計すると31%。つまり、社内SNS導入企業の3分の1を中堅・中小企業が占めていると見ることができる。
図表2 社内SNSの利用人数 |
このことは、社内SNS市場が立ち上がりの時期を経て普及のステージへ移行していることを示している。中堅クラスでもオフィスが分散していれば社内SNSに対する重要はある。一堂に講師を集めて行っていた会議を社内SNSに移行した早稲田塾がそうだ。
実際、ビートコミュニケーションの村井氏は、「大手企業ほどピラミッド組織に対する危機感を抱いていたため、社内SNSの導入は大手企業から始まった。だが、今では社員が100人以上の規模の会社からまんべんなく問い合わせがきている」と語る。社内SNS市場のすそ野は広がっていると考えられる。
もっとも、別の見方も存在する。IT分野を対象とする調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)によれば、2008年度の日本における社内SNS市場は約10億7000万円で、市場規模はよくて横ばいで推移しているという。ただし、同社の調査は社内SNS専用製品を対象としたものであり、SNS機能を搭載したグループウェアを含めて考慮すると、市場はもう少し大きい可能性もある。
ITRのシニア・アナリストである舘野真人氏は、「社内の従業員のコミュニケーション/コラボレーションを活性化させたいという企業の要望は、引き続き高まっていくと考えられる。ただし、その実現手段としてSNS専用製品が最適化どうかは疑問だが」と付言している。確かに、グループウェアなどの既存のコラボレーション製品にSNSをはじめとするWeb2.0技術が機能を搭載され始めていることは事実だ。社内SNS製品が多様化しているともいえる。そのことは、ユーザーが従来に比べて緩やかなコミュニケーションシステムであるSNSの魅力を感じていることの反映なのかもしれない。