NTTドコモ、KDDI(および沖縄セルラー)、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの携帯電話4社の次世代インフラ戦略を推し量る有力な材料に、総務省が2009年6月の1.5GHz帯/1.7GHz帯の新周波数帯の割り当てにあわせて公表した各社の「基地局整備計画の概要」がある(図表1-1)。
図表1-1 携帯電話事業者4社の基地局整備計画の概要(出典:総務省) |
A4版1ページの簡潔なものだが、次世代システム(資料では「3.9Gシステム等」と表記)の基地局展開計画や投資額など、それまで明らかになっていなかった情報が載っており、この内容を分析することで各社の次世代インフラ戦略をある程度明確化することができる。
とはいえ、ここに記されたデータだけで、各社の次世代インフラ戦略の全容や具体的なサービス展開を把握するのは困難だ。
その理由の1つは、「次世代システム」はLTE(Long Term Evolution)だけではないことである。イー・モバイルやソフトバンクモバイルが導入を予定するDC-HSDPA(Dual Cell High Speed Downlink Packet Access)など、複数の第3世代携帯電話(3G)の拡張規格が存在し、移行シナリオは複雑になっている。
加えて、大半のキャリアが新規に割り当てられる1.5GHz帯/1.7GHz帯ではなく、既存の周波数帯域を次世代システムの導入バンドの主力として考えていることも、展開を見えにくくしている。
各社の次世代インフラ戦略を読み解くためには、各次世代システムの性格や各キャリアのスタンス、そして既存帯域の利用状況を押さえておく必要があるのだ。
また、もう1つの理由として、700MHz/900MHz帯などの新たな周波数帯割り当てが検討されていることが挙げられる。2010年~2011年に固まると見られるこれらの帯域の獲得の成否により、各キャリアの戦略は大きく変化する。
本連載では、2009年6月の総務省の発表内容をベースにしながら、さらに独自の取材・分析を加えることで、携帯電話キャリア4社の次世代インフラ展開シナリオを描き出していこうと考えている。
第1回となる今回は、まずその基礎となる次世代システムの概要を解説する。