香川大学・KDDI総合研究所・NEC・santec AOC・古河電工の5者は2025年3月28日、大規模な空間多重光ネットワークの実現に必要な基盤技術を確立し、空間クロスコネクト装置とマルチコアファイバー(MCF)光増幅器からなる1000 km級の空間多重光ネットワークの実証実験に世界で初めて成功したと発表した。
今回実施した実証は2つある。
1つめは、長距離空間多重光ネットワークに関する実証。空間多重光ネットワークにおいて、FIFO(ファンイン・ファンアウト)デバイスなしの光増幅器を用いたMCF伝送システムは、従来の単一コア光増幅器およびFIFOデバイスを使用したMCF伝送システムと比較すると、余分な損失を引き起こすFIFOデバイスを削減することで光信号の品質向上が可能になる。これにより、より多くのデータをより遠くまで効率的に送信できるという。
さらに、柔軟な経路切り替えを可能とするMCF対応の光ノードとして、低損失な空間クロスコネクト装置を導入することで、コストを削減しつつ伝送距離を更に延ばすことが可能。今回、コア選択スイッチを用いた空間クロスコネクト装置とFIFOレス4コアファイバ増幅器、4コアファイバ伝送路からなる周回系長距離光ネットワーク実証実験系を構築することで、1600 kmの長距離にわたる大規模な空間多重光ネットワークが実現可能であることを初めて実証した。
長距離空間多重光ネットワークテストベッド
2つめは、マルチドメイン空間多重光ネットワークに関する実証だ。 MCFの設計・製造技術の進展に伴い、今後、コア数の異なるMCFで構築された複数の空間多重光ネットワークドメインが混在すると想定される。今回、4コアファイバネットワークと16コアファイバネットワークを、コア選択スイッチからなる空間ゲートウェイ装置を介して相互接続し、大規模なマルチドメイン空間多重光ネットワークにおいても、空間チャネルの設立と切り替えが高品質に実施可能であることを初めて実証した。
なお、4コアファイバネットワークドメインは、4コアファイバリンクとFIFOレス4コアファイバ増幅器から、16コアファイバネットワークドメインは、19コアファイバリンクとクラッド励起19コアファイバ増幅器(16コアのみ使用)から、それぞれ構成されているという。
マルチドメイン空間多重光ネットワークテストベッド
将来のBeyond 5G/6G無線サービスは、5Gの特長である「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との接続」のさらなる高度化が目標とされ、これを実現するためには、ペタビット毎秒級のトラフィックに対応可能な超大容量光ネットワークを経済的に構築することが必要不可欠となる。今回の実証により、将来のBeyond 5G/6G無線サービスを支える光ネットワークの実現に向けた扉が大きく開かれることが期待できるとしている。