京都市下京区に本店を構える衣料品卸業のウライ(裏井紳介社長)は、着物(呉服)を中心に、ジュエリーや毛皮、レザー製品などを手掛けており、この3本柱で事業を推進している。特に着物の卸では、業界でトップクラスの販売実績を誇っている。
クラウドで機器管理負担を解消
着物業界のなかでは好調なウライだが、実は市場そのものは年々縮小しており、同社もピーク時に比べれば社員数は減っている。常務取締役で営業本部長の森田亮氏は、「営業マンの人数も少なくなっているが、得意先の件数はあまり変わっていないので、いかに効率的に営業するかが課題だった」と話す。そこで、2011年秋から営業部門で営業支援システム(SFA)の導入を検討し始めた。
(左から)常務取締役で営業本部長の森田亮氏、統括本部次長の田中友馬氏
ウライは京都本店と東京支店を構えているが、卸業という性格上、得意先は全国にある。営業マンは常時出張で各地に散らばっており、このためSFAの導入効果を最大化させるには、モバイルによるSFAの活用が必須だった。
SFA用端末としてスマートフォンの導入を決定した同じ頃、総務部ではPBXのリプレースも検討していた。利用中のOKIの「DISCOVERY 2000」が2012年3月で導入から丸10年となり、サポート期間も終了するためだ。
次期PBXは、OKIも含め国内主要メーカーの製品を入念に調査したが、その最中の2011年12月、OKIウィンテック関西支店京都営業所所長の古賀真之氏から、前月に発表したばかりの「EXaaS 音声クラウドサービス(共同利用型)」の提案を受けた。
これはIP-PBXの購入、運用管理が不要で、ネットワーク経由でその機能を利用できるクラウドPBXサービスだ。中規模オフィス(500~1000ポート)向けで、複数の企業ユーザーでクラウド基盤を共用するため、低価格で利用できるのも特徴だ。1ポート当たり月額1200円(税抜)で、IP-PBXの基本機能に加え、24時間365日体制での運用管理から障害対応、ヘルプデスクサービスまで受けられる。
統括本部次長の田中友馬氏は、「主装置管理の負担もなく最新かつ多様なIP-PBXの機能が利用できる。同じOKIなので電話の使い勝手も変わらない。クラウドなのでBCP対策にもなり、導入・運用コストも安価なことから前向きに検討を始めた」と話す。
PBXをクラウド化すれば、設備購入費と保守料はゼロとなり、資産も持たずに済む。最新型のSIPサーバーを導入するとすれば、3~5年でサーバーの更新が必要となる。そうした費用が不要になることに加え、新機能が登場した場合もサービス料の範囲内で追加となるクラウドサービスの利点も含めてコストを試算した結果、EXaaS 音声クラウドサービスの採用を決めた。
さらに、営業部門のニーズから進められていたSFAとスマートフォンの導入効果を高めるため、スマートフォンを内線電話として利用する方法も模索していた。2012年はじめに、KDDIが「KDDI ビジネスコールダイレクト(BCD)」を提案。これは、KDDI網内のサーバー(携帯電話/スマートフォンの内線処理を行う)と、ユーザー企業側のPBXを連携させて内線通話を行うサービスだ。
ウライは、BCDとEXaaS 音声クラウドサービスの連携で、PBXのクラウド化とスマホ内線の両方を実現することを決定。OKIウィンテック側での接続検証などを経て、8月17日から利用を開始した。