ZETAスマートシティが遠隔監視で山間地を救う
地方自治体も人手不足に直面している。特に、山間地を抱える市町村は少子高齢化が加速し職員の確保が難しくなるなか、防災やインフラ管理など、公共サービスの質をどう保つかが問われている。そのため「人力による監視を遠隔監視に転換する必要に迫られています」(川口氏)。
川口氏によれば、最も多いニーズが河川監視だという。一級河川は国、二級河川は都道府県が管理しており、市町村が管理するのは、それより小さな川や用水路だ。そのため、LPWAを利用した安価な水位計に需要があるという。
かつては消防団や隣組が巡回し、自治体にも情報共有されていたというが、こうしたコミュニティの維持は困難になりつつある。さらに、近年ピンポイントでの水害が増加し、水位計を多くの地点に設置することも求められている。
次いでニーズが多いのが鳥獣害対策のために設置した罠の監視だ。イノシシやシカなどが耕作地を荒らす被害を放置してしまうと、収量の減少という直接的な被害だけでなく、就農意欲の低下や耕作放棄地の拡大という間接被害ももたらす。しかし罠の見回りや捕獲した動物の処理などの作業は基本的に捕獲者(罠設置者)の責任になり、非常に大きな負担を強いられている。罠を設置すべき山間地は携帯電話網の圏外になることも多い。
こうした課題を解決するため、TOPPANデジタルはZETAを活用したスマートシティプラットフォームを自治体へ提供している。ZETAで広域通信網を構築し、センサーデータを収集。データはAPI連携し、リモート水位センシングシステム「スイミール」、リモート罠センシングシステム「リモワーナ」など、用途に応じたアプリやサービスで利用する。こういったプラットフォームを採用しているのは、長野県飯綱町・南牧村、岡山県浅口市などであり、その中でも長野県飯綱町では約75km2の町域をZETAエリア化し、水位センサー15台、獣害センサー8台、雨量計6台、飲食店の混雑状況可視化目的のセンサー12台を含む多くのセンサーが稼働している。
エリア構築にあたっては既存の防災行政無線インフラを有効活用している。ZETA基地局・中継器を防災行政無線と同じ電柱に設置して通信網を確保。AC電源駆動の基地局・中継器は防災行政無線から分岐した電源を用いているが、ZETAは消費電力が小さいため追加の電気料金は発生していないという。
さらに最近では、ZETAを通じて収集した多様なデータの利活用を一段と進めるソフトウェア「PosRe」も提供している。センサーデータに加え、LINEや住民向けアプリから投稿された要望を一元的に管理。その中から任意の情報を自治体Webページや公式LINEなどで住民に対して発信する機能を持ち、自治体広報のDXも実現する(図表2)。
図表2 ZETAネットワークと情報統合プラットフォーム(PosRe)との関係
「ZETAアライアンスには設置・施工を行う企業も加盟しており、自治体や企業の相談を一括して引き受けられることがZETAのエコシステムの強みです」と川口氏。人手不足の悩みはまずZETAアライアンスに持ちかけてみたい。
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ZETAアライアンス
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