Wi-Fi 6E/7最新動向を徹底解説 注目は速度より「安定通信」や「省エネ」機能

Wi-Fi 6Eが順調に普及している。主戦場は、学校やスタジアムだ。Wi-Fi 7対応製品も続々と登場するなか、6GHz帯の周波数拡張やコンシューマー向け端末の拡大が今後のカギを握る。

家庭やオフィスに加え、製造工場や医療現場など様々な場面で活用されているIoT機器。これらを長年にわたり支え続けてきたのがWi-Fiだ。Wi-Fiという名称が誕生したのは1990年代後半のこと。2000年代初頭から普及に弾みがつき、2021年には、OFDMA(直交周波数分割多元接続方式)等を実装するWi-Fi 6が標準化された。

このWi-Fi 6をさらに拡張させたのが、2022年に解禁となった「Wi-Fi 6E」である。1999年に5GHz帯が追加されて以来、Wi-Fi用の周波数は2.4/5GHz帯という2つの周波数帯の状態が20年以上続いたが、Wi-Fi 6Eでは新たに6GHz帯を使えるようになった。日本では、このうち5925~6425MHzの500MHz幅が無線LAN用帯域として割り当てられている。

高速通信を実現にするにはまとまった帯域が必要で、Wi-Fi 6では最大160MHz幅まで確保できる。2.4/5GHz帯では、この160MHz幅を2つしか取れなかったが、6GHzが利用可能になったことで、合計5チャネルを利用できる。

2.4GHz帯は電子レンジやBluetooth等にも使われている周波数であるため、電波干渉を起こしやすい。5GHz帯も航空レーダーや気象レーダーに使用されていることから、これらのレーダーを感知した際には、別のチャンネルに切り替える必要があり、1分程の通信断が発生するおそれがある。6GHz帯にはこのような制約がない。

全国の家電量販店の販売実績を基にバッファローが行った、Wi-Fiルーターに関する市場調査によると、今年6月時点でのWi-Fi 6Eの販売構成比は4.6%(図表1)。「6GHz帯も使えるという意味で、Wi-Fi 6Eはハイエンドに分類される。Wi-Fi 6と比べると伸びは緩やかだが、着実にシェアは上がっている」と同社 事業本部 法人マーケティング部 法人BBSマーケティング課 課長の幅吉史氏は評する。

図表1 Wi-Fi世代別構成比

図表1 Wi-Fi世代別構成比

日本ヒューレット・パッカード(HPE)Aruba事業統括本部 事業開発本部カテゴリーマネージャーの藤内理志氏も、「規格がリリースされて1年ほどが経過し、国内でも徐々にWi-Fi 6Eを使うユーザーが増えてきた。我々が展開するアクセスポイント(AP)のうち、Wi-Fi 6E対応製品は約3割を占める」と語る。

学校やスタジアムで活用広がる

バッファローの幅氏によると、Wi-Fi 6Eの採用に積極的な業界の1つが教育だ。例えばある中高一貫校は、6階建ての高校棟にバッファロー製のWi-Fi 6E対応AP「WAPM-AXETR」を82台導入。これにより、1000人規模が集まる同校でも、より快適に「1人1台端末」やクラウド型教材を利用できるようになったという。

さらに多数のユーザーを収容する必要があるスタジアム/イベント会場からの注目度も高い。海外の事例となるが、全米バスケットボール協会(NBA)チーム「ゴールデンステート・ウォリアーズ」の本拠地である「チェイス・センター」では、HPE製のWi-Fi 6E対応AP「AP-635」が活用されている。チェイス・センターは、北米のスポーツ会場として初めて、Wi-Fi 6E対応APを導入。約1万8000人を収容するアリーナを、250台以上のAP-635が支えている。

約1400人の職員が働く某市役所は、庁内に43台のWAPM-AXETRを導入し、1台あたりの接続端末が30台未満になるよう配置した。同市役所の近くには空港があるため、従来は航空レーダーによる影響を受ける5GHz(W53/W56)が使いづらいという問題があったが、6GHz帯を利用できるWi-Fi 6Eにより、安定した職場環境の構築が実現できたそうだ。

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