BYODは結局、ROIの問題
ただ、このように具体的にコストについて考えていくと、必然的に次の大問題に突き当たることになる。それは、スマートフォン/タブレットの業務利用のROI(投資対効果)をどう評価するのか――。BYODがトレンドとして台頭してきた背景には、スマートフォン/タブレットの導入効果が数値化しにくいからという要因もある。
「結局、ROIが説明できるのであれば、会社でスマートフォン/タブレットを購入して支給すればいい。しかし、ROIが説明できない端末に会社は投資できない。そうしたところに個人の間でスマートフォン/タブレットが盛り上がってきたので、『ならば個人の端末を使えばいいのでは』という考え方が台頭してきたと私は理解している」と福田氏は語る。
営業マンがスマートフォン/タブレットを活用することで売上が上がるならば、会社は喜んで全営業マンに支給するはずだ。しかし、例えば外出先などでの社内メールやスケジューラの確認といった使い方だけでも売上は上がるのか。その便利さは誰もが認める一方、経営陣に対して「はい、売上がこれだけ上がります」とは即答できる人は少ないにちがいない。
NTTとKDDIというライバル企業を上回る1人当たり営業利益を実現しているソフトバンク。7月11日に開催されたイベント「SoftBank World 2012」で、孫正義社長はその理由の1つとして「100%の社員に、iPhoneとiPadを支給している」ことを挙げたが、その因果関係を立証することは通常なかなか難しい |
そこでBYODが浮上するわけだが、会社としてセキュリティリスクに適切に対処していく必要がある以上、BYODといってもコストは発生する。つまりは、やはりROIの説明が必要だ。
BYODの推進が従業員の生産性向上につながると思っていても、数字できちんと説明できないのであれば、IT部門としては当然消極的にならざるを得ない。
BYOD推進へ「セキュリティポリシーの見直しを!」
JSSECの関氏は、こうしたBYODのジレンマを乗り越えるため、「セキュリティポリシーを根底から見直してほしい」と提言する。
自社のセキュリティポリシーが必要以上に厳格になっていないかを抜本的にチェックしたうえで、ITコンシューマライゼーションの時代に適合した新たなポリシーを策定し直すことで、BYODを自社の生産性向上に活かせるチャンスが高まるのである。「スマートデバイスによるワークスタイル革新を推進するために、BYODも踏まえ、企業はセキュリティに関する“発想”を変えていかなければならない」と関氏は話す。
次回の最終回では、BYODを成功させるために必要な対策やシステムについて具体的に紹介していきたい。
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