UQコミュニケーションズ(UQコム)は2010年6月7日、「一周年記者発表会」を開催し、新社長の紹介と2010年度の事業プランを発表した。「UQ WiMAX」の有料サービス開始は2009年7月1日であり、1周年には少し早いが、田中孝司社長によると「これから夏商戦に向かってアクセルを踏んでいくため」前倒しでの発表会になったという。発表会では、田中社長が6月14日付けで就任する野坂章雄新社長を紹介し、野坂新社長が2010年度の事業プランを発表した。
一周年記者発表会で登壇した田中孝司社長(左)と野坂章雄新社長 |
野坂新社長は2010年度(2011年3月)の加入目標を、5月末現在の19万2600から「上期中に40万、年度末には80万にしたい」と語り、実現のために「エリア」「スピード」「デバイス」の3つのキーワードで施策を発表した。
まず「エリア」だが、2009年度末の7013局から8000局増の1万5000局を2010年度末までに設置する。47都道府県570市区町村をカバーし、特に「首都圏の通勤路線を整備し、完全エリア化する」方針だ。また、首都圏エリアでは「課題だった屋内対策にも積極的に取り組んでいきたい」という。
「UQコムの生命線」と位置付けている「スピード」については、同社は下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの規格上の速度ではなく、「ユーザー実効速度」を重視し、システムチューニングにより、その改善に努めている。ユーザー実効速度は、2009年2月の段階で下り15Mbpsだったものが2010年3月には20Mbpsに向上。8月には30Mbpsを実現する予定だ。さらに12月末には64QAM技術を適用し、下り最大40Mbps、上りも規格速度を上回る15Mbpsを実現できる見込みという。その後は、2012年リリースを目標に、下り最大330Mbpsを実現できる新規格「IEEE802.16m」を導入し、超高速化対応とトラフィック増加対策を行う予定で、2010年中にデモを実施したい意向だ。
「デバイス」では、現在WiMAX搭載モバイルPCが9メーカー37機種出ており、「今後モバイルPCには標準搭載されるだろう」(野坂新社長)とみている。また、今後はWiMAX対応Wi-Fiルーターにも注力する方針であり、ラインナップの総称を「WiMAX Speed Wi-Fi」と命名して普及に務めていくことを発表した。今回新たに、シンセイコーポレーションとソフトアンドハードからモバイルタイプが、NECアクセステクニカとアイ・オー・データ機器から据え置きタイプが登場し、既存製品と合計で5社7機種が揃った。
「WiMAX Speed Wi-Fi」のラインナップ |
今後について野坂新社長は、(1)携帯電話モデルとの差別化、(2)オープンモデルの加速、(3)グローバル展開を成長への3つの柱として挙げた。(1)については、携帯電話と違ってデータ専業で展開してきたことを強調し、「元々音声をやっていないことを逆に生かして差別化したい」と述べた。(2)では、クラウド側にいろいろなアプリケーションがあり、それを端末側で利用するビジネスモデルを追求していく。端末はまずPCから入ったが、今後はポータブル音楽プレーヤーや携帯ゲーム機等、Non-PC系にもWiMAXを搭載していく。(3)のグローバル展開は、現在WiMAXは世界148カ国でサービスを展開中であり、グローバルローミングにより、「どの国に行っても使えることを目指したい」と語った。