国民の生活に不可欠なインフラである鉄道。国土交通省によると、2021年度の国内公共交通機関の分担率は、鉄道が81.7%を占めている。
鉄道の安全かつ確実な運行のためには、線路や駅、信号などのインフラ整備が必要になるが、「鉄道通信システム」もそのうちの1つだ。
鉄道通信システムは、鉄道関係者向けと乗客向けの2つに大別される。前者の例としては、指令員と乗務員が連絡を行うための「列車無線システム」や、非常事態時に列車から無線信号を発して付近を走行する列車を緊急停止させる「防護無線装置」などが挙げられる。後者は、構内放送装置や行先案内表示器などが該当する。
いずれも鉄道運行に欠かせないシステムであるが、実は課題もある。鉄道用の無線システムにはVHF帯(30MHz~300MHz)とUHF帯(300MHz~3GHz)がメインで使用されているが、「鉄道においても大容量化・高速化のニーズが少なからずあり、現状のVHF帯やUHF帯を使った無線システムはすでに限界が来ている」。こう指摘するのは、鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研) 情報通信技術研究部 通信ネットワーク研究室長の中村一城氏だ。
鉄道総合技術研究所 情報通信技術研究部 通信ネットワーク研究室長 中村一城氏
災害時にも迅速かつ的確な情報伝達を行えるようにするため、鉄道事業者各社は、独自に開発した専用設備を鉄道通信システムに用いている。その開発コストと維持管理コストが鉄道事業者にとって大きな負担となっているほか、少子高齢化に伴う就労人口の減少を見据えたシステムメンテナンスのリソース確保も課題だ。