<特集>日本の通信インフラの論点生成AIは北海道で開発 データセンター大移動は実現するか

生成AI開発に必要な膨大な電力をクリーンな再エネで賄うため、データセンターを北へ移動させる──。日本でもそんな動きが始まっている。この大移動を成功させるには、何が必要なのか。

大都市圏から北へ──。需要地である大都市の近郊に集中してきたデータセンター(DC)は今後、大移動時代を迎えるかもしれない。

候補地の1つが、北だ。涼しい気候は冷却に適する。さらに、再生可能エネルギーが豊富な土地ならば、それもDC立地の有力条件になる。

世界的には、北米の巨大テック企業が2010年代末から北欧にDC設置を推進してきた。例えば、人口38万人の小国アイスランドが“DC大国”と呼ばれる理由は、20度をめったに超えない気候と、水力・地熱を主力とする再エネだ。同国の電源構成に占める再エネ割合は100%である。

増えるDC建設の制約条件

「北へ向かう傾向は明確にある」

情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員の左高大平氏は世界的な情勢についてそう話す。前述の理由に加えて、「DCに求められる要件が厳しくなるなかで、好きなところに建てることが難しくなってきた」ためだ。

情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員 左高大平氏

情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員 左高大平氏

制約条件の1つは、やはり電力だ。

欧州のDC集積地の1つに、アイルランドのダブリンがある。同国は2021年時点で、DCが使用する電力が全電力消費の14%に達した。2028年までに29%まで増大する可能性があることから2022年以降、DC事業者による電力系統への接続を一時的に停止。同様に、アムステルダム等でも条件が厳格化する傾向にある。

ことはEUにとどまらない。シンガポールも2019年からDC建設を一時的に停止。「2022年に解禁はしたが、非常に条件は厳しくなった」(左高氏)。地域の電力需要とのバランス、グリーン化目標との整合性の観点から、厳しい制約が課されてきている。

比べると、日本はDC建設に寛容だ。

国内のDCサービス市場規模は2022年度に2兆円を突破(令和5年版情報通信白書)。2015年(6400億円)から、7年で3倍以上に成長した。

勢いは衰えない。IDC Japanの予測では2026年に3兆2083億円に到達する見込みだ。建設投資に関しては、2024年から2027年にかけて毎年5000億円を超えると予想されている。

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