ローカル5Gの導入には無線局としての免許取得が必要だが、その申請のためには無線従事者を選任しなければならない。この無線従事者は、国家資格である第三級陸上特殊無線技士(以下、三陸特)以上の資格が要求される。
では、この三陸特とはどのような資格なのか。
電波法に定められている無線従事者資格は全部で23種類ある(図表1)。総務省の指定を受け、このすべての国家試験を実施しているのが日本無線協会だ。
図表1 無線従事者資格(全23資格)
無線従事者資格は総合、海上、航空、陸上、アマチュアの5つに分かれ、それぞれ資格ごとに扱える無線設備が定められている。三陸特は陸上の初等クラスに分類される。
三陸特は陸上の無線設備のうち、25010kHz~960MHzの周波数(空中線電力50W以下)と、1215MHz以上の周波数(空中線電力100W以下)の設備を操作することができる。ローカル5Gで使用される28GHz帯、4.7GHz帯の双方が後者に含まれる。出力の制度上の最大値である48dBmは約63Wに換算されるので、この規定の範囲内だ。なお、扱えるのは陸上の固定局や基地局に限られ、レーダーや人工衛星との通信、船舶・航空無線は対象外となる。
ドローン運用にも三陸特
「三陸特の資格を取得する方法には、国家試験受験と、養成課程の講習を受講して修了試験を受けるという主に2つの方法がある」と日本無線協会の担当者は述べる(このほか、認められた学校で指定科目を履修することによる取得も可能)。養成課程は同協会のほかにも複数の民間企業が開講しており、eラーニングによる受講が可能な機関もある。
図表2に近年の国家試験申請者と、同協会における養成課程受講者の推移を示す。2020年度から2021年度に大きな伸びを示しているが、これには「ドローンの影響が背景にあるのではないか」と担当者は述べる。産業用ドローンの操作に用いられる周波数に5.7GHz帯が充てられ、この運用に三陸特が必要になるからだ。
図表2 第三級陸上特殊無線技士の国家試験申請者・養成課程受講者の推移
養成課程受講者の数は国家試験受験者を大きく上回っているが、これは業務の一環として資格を得ようとすることが大半のためという。同協会では、一般公募による養成課程のほか、法人から委託のうえで開講する「受託養成課程」を実施しており、これらを合わせた2022年度の実施件数は478件となる。
また、三陸特とその上位資格である第二級陸上特殊無線技士(二陸特)は、2022年2月にペーパーテストからテストセンターでのCBT方式に移行し、試験日時や受験回数の制約が大きく緩和された。受験可能なテストセンターは全国に300以上あり、申し込みから最短2週間で受験が可能だ。ただし実際には、試験対策を十分に行うために、1カ月内外に受験することが多いという。加えて、この移行により試験結果が試験後2日ないし2週間という短期間で通知されるようになった。