UCOMがIP電話システムの自社開発でコスト半減――オラクルのインメモリDBを採用

UCOMはIP電話のSIP交換機の更改にともない、オラクルのインメモリ・データグリッド製品「Oracle Coherence」(オラクル・コヒーレンス)を用いた自社開発を実施、この11月から新システムによるサービスを稼動させた。先月11月30日に開催された「オラクルミドルウェアフォーラム」において、同プロジェクトの推進に当たったUCOM ICTソリューション部サービス開発課長の木村匡良氏がその導入の経緯と詳細を明らかにした。

UCOM ICTソリューション部サービス開発課長 木村匡良氏
UCOM ICTソリューション部サービス開発課長 木村匡良氏

UCOMが使用中の交換機の製造終了(EoL)に伴うサポート提供終了の知らせをメーカーから受けたのは1年半前のこと。UCOMにとって一番の難問はサポート停止までに残された1年半という短時間の中で後継機の選択あるいは自社開発のいずれかを選択し、約8万の加入者をスムーズに新システムに収容・移行させることであった。

検討の末、UCOMは自社開発を選択するが、その理由について木村氏は、(1)IP電話の現行加入者数が約8万なのに対して、メーカーの後継機は数十万規模の加入者の収容が可能と同社にはオーバースペックであったこと、加えて(2)見積もりベースで十数億円と高額であったことを挙げた。「後継機では、投資対効果の点であまりにも釣り合いが取れない。最低でもこの半分以下の投資額に収める必要があった」という。

投資対効果の点でメーカー製の後継機の導入は見送られた
UCOMが自社開発を選択するに至った経緯。投資対効果の点でメーカー製の後継機の導入は見送られた

木村氏は自社開発にあたっての課題と目標を整理し、新システム開発の条件を次のように設定した。

(1)今後の加入者増を見込み、収容能力を15万ユーザー(現状の約2倍)とする
(2)後継機購入価格の1/2以下の投資額で開発からリリースまでを行う
(3)データベースの選定基準は、秒間500トランザクション以上の処理能力
(4)使用中の交換機と同等の信頼性を担保する

そして、処理速度が高速なインメモリ・データベースを対象に、各製品の性能比較・検討を実施。上記条件を満たす可能性があるものとしてオラクル・コヒーレンスを選択した。オラクル・コヒーレンスは検証時に、秒間580トランザクションの評価を得たという。加えて、低価格なハードウェアに搭載可能で初期投資を抑えられる点、スケーラビリティが高くサービス開始後も増設が容易な点などが決定打となり、2011年2月に採用を決めた。

データベースの選定基準は高速処理と信頼性
データベースの選定基準は高速処理と信頼性

UCOMはオラクル・コヒーレンスの採用により、従来システムの半分以下のコストで開発からリリースまでを実現したわけだが、もう1つ特筆すべきは、同社の開発人員の大半が通信系技術者でデータベース全体に対する知識に不足があったにもかかわらずコヒーレンスはマッチしたことだ。DB/コヒーレンス開発者は3名であったという。

「コヒーレンスは特別なスキルが無くても一通りの設計・導入ができるソフトウェア。Javaのスキルに頼った設計と実装で必要な条件を実現できる」と木村氏は話した。なお、稼動中の新システムは、目標を大きく上回る秒間750トランザクションの処理能力を発揮しているという。

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