テレビ会議/Web会議システムは、従来は会議室同士を結ぶ1対1の会議が主流で、導入目的も「出張コスト削減」と「移動時間の節約による業務の効率化」の2つがメインだった。現在もまだ、会議室での利用が中心だが、最近は会議室を出て、人と人をつなぐパーソナルなニーズも高まってきている。
要因としては、会議室への導入が一巡したことで、メーカーが他の利用シーンを訴求するようになったことに加え、テレビ会議/Web会議の利便性を認識したユーザーも、会議室以外の利用シーンを考えるようになったことがあげられる。
そうした折に発生した東日本大震災。シスコシステムズ・テレプレゼンスビデオ事業部営業部長の南部武志氏は「震災後は、必要な時にすぐに顔を見ながらコミュニケーションがとれるツールとして導入を考えるユーザーが増えた」と語る。実際、震災直後は多くの企業がテレビ会議/Web会議システムを活用し、被災地と結んで状況把握に努めた。また、BCP対応として、震災後は在宅勤務(テレワーク)がキーワードとなり、それを実現するためにビジュアルコミュニケーションシステムを導入するケースが急増している。
このように、会議室から外へ、そして、よりパーソナルへと用途は拡大している。そうしたなかでメーカー・ベンダー各社は、事業戦略に基づいてユーザー規模や利用シーンのターゲットを定め、それにミートする製品を提供している。だが、据え置き型端末であろうが、卓上型端末であろうが、またWeb会議システムであろうが、それぞれの利用シーンで競合する製品同士の基本性能は、「行き着くところまで行っており、各社間で大きな差はなくなっている」と複数のメーカーのマーケティング担当者は口を揃える。
そこで、他社との差別化を図るために、製品にプラスアルファの付加価値を加えてソリューションとして提案する動きが出てきている。本特集では、そうしたメーカー・ベンダー各社の「こだわり」の代表的な事例を見ていく。
IT専任の担当者がいない中小企業でも大丈夫!
パナソニック システムネットワークスは、据え置き型の「HD映像コミュニケーションシステム(HDコム)」を扱っており、現在は最新モデルの「KX-VC600」と「KX-VC300」を中心に展開している。同社のメインターゲットは、「テレビ会議システムを利用したことがない従業員300人以下の中小企業」だ。この層のユーザーは、IT専任の担当者を置いていないケースが多く、ネットワーク設定などが高い導入障壁となる。
そこで今年7月から、クラウド型接続サービス「つながるねっと」の提供を開始した(図表1)。同サービスを利用することで、ユーザーは複雑なルーター設定なしで簡単に通信環境を構築できる。また、ユーザー専用の7桁の接続番号を利用できるため、従来のようにIPアドレスを打ち込む必要がなく、電話をかける感覚で誰もが簡単に利用できる点も大きな特徴だ。
図表1 パナソニック システムネットワークスの「つながるねっと」サービス |
さらに、インターネット回線を使用するため、VPN構築のための初期費用も不要だ。暗号通信にも対応しているので、安心して通信できる。つながるねっとは、12月までは無償サービスとして提供し、2012年1月からは有償サービスとなる。