ソフトバンクは2023年10月26日、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下HAPS)の移動通信システムを実現するために、HAPSの無線通信システムの設計に必要となる「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部で、HAPSからスマートフォンなどの端末(移動局)に届く電波の方向を推定する「移動局側の電波到来方向推定モデル」を開発し、国際電気通信連合の無線通信部門(以下ITU-R)のHAPS向け「電波伝搬推定法」に追加・改訂され、ITU-R勧告P.1409-3として発行されたと発表した。
このモデルは、HAPSで5Gなどの通信を行う際にアンテナシステムを効率的に用いるための設計に生かされることで、安定した通信を提供することが可能となり、今後のHAPS事業の展開に貢献するという。
HAPSを通信インフラとして利用する場合、成層圏から地上に向けて発信する電波が届く範囲などを正確に推定する必要がある。ソフトバンクでは、その電波伝搬推定法のうち隣国や異なる無線システム間の電波干渉を調整するための「干渉検討用電波伝搬推定法」を開発し、2021年10月にはそのモデルが「ITU-R勧告P.1409-2」として国際標準化された(参考記事:ソフトバンクらのHAPSの電波伝搬モデルがITU-Rに追加、国際標準化を達成|BUSINESS NETWORK)。
HAPS向け電波伝搬推定法における、2つの電波伝搬推定法
今回、国際標準化を達成したのは電波伝搬推定法の「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部にあたる「移動局側の電波到来方向推定モデル」。HAPSと移動局間の仰角や方位角などの位置関係や、周辺の建物の高さや道路幅など移動局周辺の環境を考慮して、HAPSから移動局への電波の方向と電波強度を推定するモデルという。
都市・郊外におけるマルチパス環境の電波の到来を「移動局側の電波到来方向推定モデル」を活用して推定
このモデルは、HAPSで5Gなどの通信を行う際に効率的なアンテナ設計に活用され、また「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部である「人体遮へい損失モデル」で考慮される都市・郊外地におけるマルチパス環境を推定することができるとしている。加えて、建物による電波の損失を詳細に計算できるモデルでは、基地局の高さなどの適用範囲をこれまでより広げたことで、NTN(非地上系ネットワーク)などの上空と地上間の電波環境における計算も行うことができるという。
今回の国際標準化により、HAPSの商用化を目指す世界各国のさまざまな事業者は、このモデルを活用しHAPSの無線通信システムの設計を効率的に行うことができるとしている。