地球温暖化による気候変動が深刻化するなか、日本は2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロとする方針を掲げる。その実現に向けて、通信事業者各社は脱炭素経営に舵を切っている。
通信は常につながることを至上命題とするため、基地局やデータセンター、通信局舎を24時間365日稼働しなければならず、膨大な電力を消費することが背景にある。
例えばKDDIの1年間の電力消費量は約25億kWh(2021年度)。電力を作る際にCO2が排出されるので、電力消費量が増えるとそれだけCO2の排出量も多くなる。2021年度は約100万トンと一般家庭の約40万世帯分に相当するCO2を排出した。うち98%が基地局などの通信設備で使用する電気だ。
これから本格的に普及する5Gで使われる高い周波数は直進性が高く、基地局を密に設置する必要があるため、通信量の増大とともにCO2のさらなる増加が避けられない。通信設備におけるCO2排出量の削減が喫緊の課題となっている。
こうした状況を受けて2022年4月、KDDIは単体で2030年度、グループ全体で2050年度にCO2排出量実質ゼロという意欲的な目標を策定した。省エネとCO2排出量の少ない再生可能エネルギーへの切替の“合わせ技”で目標の実現を目指す(図表1)。
図表1 CO2排出量実質ゼロに向けたロードマップ
省エネについては3G停波のほか、基地局や通信局舎への省電力技術の導入、基地局設備の他社との共用などにより推進する計画だ。
再生可能エネルギーへの切替に関しては、今年4月に設立した子会社auリニューアブルエナジーで発電された再生可能エネルギーを自社の通信設備に供給する。
電力消費量の多い企業では、CO2排出量を大幅に減らすことが難しいため、GHGの排出削減量をクレジットとして取引可能にしたカーボンクレジットを購入し、削減困難な排出量と相殺するといった方法を採ることが少なくない。これに対し、auリニューアブルエナジー 代表取締役社長の鈴木悟朗氏は「再生可能エネルギーを発電し供給するという“自給自足”により、KDDIひいては日本のCO2排出量削減に大きく貢献していきたい」と意気込む。