AWSが「通信業界の生成AI活用」で調査レポート、関連支出は2年以内に最大6倍へ

Amazon Web Servicesは2023年10月18日、同社ブログにおいて、「調査レポート:通信業界における生成系AIの活用、課題、そして未来」の結果を公開した。同調査は、戦略コンサルティング企業のAltman Solonと協力し、北米、西欧、アジア太平洋地域の通信事業者の幹部100名以上を対象に行ったものだ。

通信事業者の4つの業務領域(製品・マーケティング、カスタマーサービス、ネットワーク、社内IT)をまたぐ17のユースケースにおいて、生成系AIを既に活用しているか、活用に向けて取り組んでいるとした回答者は全体の19%だった。この数値は今後、1年以内に34%、2年以内に半数近く(48%)に達する見込みという。

これに伴い、生成系AIへの支出も現在の最大6倍に急拡大する可能性がある。急拡大を牽引するユースケースはチャットボットで、回答者の92%が、導入の可能性の高いものとしてカスタマーサービスとチャットボットを挙げている。そのうち63%が、すでに開発を進めていると回答した。

活用ステージ別生成系AIユースケース(全回答者に占める割合。回答者数はユースケースごとに異なる)

活用ステージ別生成系AIユースケース(全回答者に占める割合。回答者数はユースケースごとに異なる)

この用法は、既存の基盤モデルを活用するものであり、最初の段階としては正しい方向である一方、将来的には生成系AIがネットワーク運用を支援するとAWSは考えているという。

例えば、生成系AIは通信事業者がネットワーク要素をインストールする際に参考とするマニュアルからデータを取り込むことができる。このデータをチャットボットと組み合わせることで、プロンプトに基づくインタラクティブなガイダンスを提供できるようになり、インストール作業のスピードアップや簡素化につながる。

カスタマーサービスにおける活用のイメージ

カスタマーサービスにおける活用のイメージ(本レポートより)

ただし、通信事業者の64%は、検討している生成系AIのユースケースの多くが、既存のアプリケーションやプロセスではまだ実現されていない新たなアプリケーションだとも述べている。

地域別では、北米の通信事業者が生成系AIの活用でわずかに先行(22%が活用、または活用に向けて既に取り組む)。欧州の通信事業者(同19%)は、EUの一般データ保護規則(GDPR)などのデータレジデンシーに関する域内規制のため、生成系AIの活用には、より慎重な姿勢を見せているとしている。アジア太平洋地域の通信事業者は同16%で、他地域と比べて緩やかなデータ規制の環境にいながらも、言語などのローカライゼーションの課題に面していると分析している。

生成系AIの多くは大規模言語モデル(LLM)をベースとしており、特定言語のデータコーパスによるトレーニングが必要となる。現在の主要なLLMの多くは英語で構築・提供されており、AWSはこの溝を埋めるべく取り組んでいる。例えば、2023年7月に日本で発表した「AWS LLM開発支援プログラム」は、日本におけるLLM開発の加速を支援するもので、総額600万米ドル規模のAWSクレジットを提供するなど、LLMの多様性を推進する取組を進めている。

本調査に関して、AWS通信およびエッジクラウド担当 チーフテクノロジストのイシュワール・パルルカー(Ishwar Parulkar)氏は、「生成系AIは、あらゆる場で活用され、すべての産業に大きなインパクトをもたらすとAWSは考えています。生成系AIは機械学習の普及に続く新たな波であり、通信業界を含む業界で、お客様体験や多様なビジネスアプリケーションを革新する可能性を秘めています」と述べている。

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