――企業におけるモバイル活用の重要性が高まるなか、モビリティ中心のネットワークを実現する新アーキテクチャ「Aruba MOVE」を発表しました。
松本 ほんの数年前までネットワークとは意識してつなぐものでしたが、今ではつながっていることが当たり前の時代になりました。スマートフォンやタブレット端末の普及によるモバイルデバイスの多様化、そして日本では震災や電力問題の影響もその変化を加速させています。
災害は不幸な出来事でしたが、それによって「無駄を無くそう」という意識が格段に高まったこと、家族や友人、同僚との絆を強く意識するようになったことは、ネットワークのあり方、モバイルデバイスの活用の仕方を大きく変化させる要因になると考えています。
――企業もそうした動きを無視できなくなってきていますね。
松本 PCの社外持ち出しが生産性向上に与える影響を認める企業が増えたり、従来はバックアップ用途が大半だったクラウドサービスを機動性や生産性向上のために積極的に活用するようにもなっています。
スマートフォンについては、個人契約の端末を仕事に使うケースが急増しています。利点がある一方、放任すればセキュリティリスクの増大にもつながります。こうした新たな動きへの対応も必要になっています。
さらに、在宅勤務や勤務時間・曜日のシフトなど働き方が多様化していることは、アルバの事業にも大きく影響すると考えています。
我々は以前から、日本では特に時間の無駄が非常に大きいと考えてきました。通勤・通学などの移動に伴う膨大な機会ロスが発生していますが、ネットワークを活用することでこの無駄を省くことができます。社会全体の意識が変化している今、通信・ネットワーク業界全体でアクションを起こすべきタイミングと言えるでしょう。
「いよいよ準備が整った」
――Aruba MOVEによって実現するネットワーク像とは、どのようなものでしょうか。
松本 従来は、ネットワークやデバイスに無理矢理個人が合わせていましたが、Aruba MOVEは、いつでもどこでも最も使いやすいデバイスから安全にアクセスできるネットワークを実現するものです。
そのカギは「コンテクスト」にあります。ユーザー、場所、デバイス、アプリケーションの4つのコンテクストをネットワーク側が把握し、それに合わせて適切な環境を自動的に適用するアーキテクチャです。
――「コンテクスト・アウェアなネットワーク」は、これまでも多くのベンダーが提唱してきたものです。
松本 その通りです。コンセプト自体は新しいものではありません。しかし、これまではあくまでコンセプトに過ぎませんでした。
Aruba MOVEを発表したのは、そのために必要な技術とツールがついに揃った、いよいよ本当にコンテクスト・アウェアなネットワークが実現できる段階にきたということです。
――キーポイントは何でしょうか。
松本 認証やセキュリティ、端末・アプリの可視化、管理などの機能がすべてデータセンターに集約・統合される点です。この統合サービスがネットワーク全体を見守ることで、ユーザーの状況を絶えず把握しながら最適なアクセス環境を適用することが可能になります(図表)。
図表 「Aruba MOVE」アーキテクチャのイメージ |
それを実現する大きな要素が、Aruba OSに新たに搭載された端末フィンガープリントの機能です。これによって、ユーザーがどのような端末・アプリを使って何をしようとしているのかをセンター側で把握し、コンテクストを識別してセキュリティポリシーを適用できるようになりました。このほか、管理者の手を煩わせずにユーザーが自分で使いたい端末を登録できる認証システム「Amigopod(アミーゴポッド)」や、端末とセキュリティポリシーを可視化するネットワーク管理ツール「AirWave(エアウェイブ)」など、さまざまなコンポーネントによってAruba MOVEが構成されています。