東日本大震災をきっかけに、災害に強いコミュニケーション基盤を検討する動きが企業の間で活発化している。では実際のところ、今回の震災ではどのようなコミュニケーションツールが役に立ったのだろうか。
「当社の社内アンケートで分かったのは、平常時と震災時では使えるツールにやはり差異があったということ。平常時は非IP網の電話、そしてメールなどの蓄積型のコミュニケーションツールがよく使われているが、震災時にはIP網、それからインターネット系のコミュニケーションツールが非常に役に立った」とNECの嶋田健久氏はUCサミット2011で語った。具体的には次の4つのツールが特に有効に機能したという。
日本電気 UNIVERGEサポートセンター 第一サポートシステム部 マネージャー 嶋田健久氏 |
まずは、「プレゼンス&チャット」である。震災発生直後の電話がつながりにくい状況下において、安否確認などに活躍した。また、在宅勤務する部下のプレゼンスを確認するツールとしても、幹部社員からは高く評価されたそうだ。
2番目は「どこでも内線ソリューション」だ。これは、内線通話エリアを社外にまで拡張するソリューション。iPhoneとAndroidに対応したアプリケーションが用意されており、スマートフォンを使ってオフィス外でもVoIPで内線の発着信が行える。「震災発生時には、やはり電話の通信規制が実施される。このため複数のインターネット系のツールを駆使して、連絡手段を確保することが重要になる」と嶋田氏は話した。
震災時に利用できたツール。IP網、そしてリアルタイム型のツールが有効だった |
被災現場との迅速な情報共有を可能にしたホワイトボード機能
3番目のツールは、「緊急対策会議ソリューション」である。NECグループでは77拠点が被災したが、被災拠点の状況を迅速かつ正確に把握し、復旧に向けたアクションを起こしていくうえで、遠隔会議システムが大いに貢献したという。なかでも有用だったのはホワイトボードの共有機能だ。「現場から逐一上がってくる情報をホワイトボードに書き込み共有することで、災害対策本部に素早く必要な情報が伝わった」。
最後の4番目は「シンクライアント」である。NECでは2008年夏からシンクライアントを展開しており、普段から社内でも利用しているが、これが自宅などでの業務継続に功を奏した。
これら4つのツールなどを駆使して、震災直後の安否確認から復旧作業、そして事業継続に取り組んだNECであるが、嶋田氏が強調したのは、こうしたツールを普段から活用することの大切さである。使い慣れたツールだからこそ、不測時にも活きるのである。