SAPジャパンは2011年9月27日、ERPパッケージ「SAP」のうえで使用できるエンタープライズ・モバイル・アプリケーション27種類の日本語版を、第4四半期より提供開始すると発表した。
今回、提供開始を予定しているアプリケーションは、営業や製造現場などの第一線で活躍する担当者から、外出先や移動途中でも経営戦略に重要な企業情報をリアルタイムに閲覧する必要がある管理者まで、利用シーンの異なるユーザーに合わせて豊富なラインアップを揃えたのが特長だ。これによりSAPユーザーは、基幹システムとモバイル端末のセキュアかつシームレスな接続が可能になり、モバイル・デバイス・マネジメント(MDM)機能やマルチデバイス対応などを容易に実現することができるようになるという。
27種類のモバイルアプリケーションは、「ライトアプリケーション」、「エンタープライズアプリケーション」、「コンシューマーアプリケーション」の3つのから構成される。主なアプリケーションは以下の通り。
(1)従業員の生産性を向上する「ライトアプリケーション」
SAP Employee Lookup(従業員検索)
SAP Customer and Contacts(得意先検索・照会)
SAP Sales Order Notification(受注ステータス参照)
SAP Material Availability(在庫照会)
SAP Payment Approvals(購買承認)など全21種
(2)RM利用など業務プロセスの実行とBI(Business Intelligence:データ分析/加工手法)で高度な情報管理を行うための「エンタープライズアプリケーション」
SAP CRM Sales(CRMセールス)など全5種
(3)コンシューマーに情報のアクセスを提供する「コンシューマーアプリケーション」
SAP Citizen Connect(住民サービス) 全1種
これらのモバイルアプリケーションは、SAP社が買収し統合されたSybase社のモバイルアプリケーション開発基盤「Sybase Unwired Platform(サイベース・アンワイアード・プラットフォーム:SUP)」上で稼働し、同社が提供するMDMソフトウェアの「Afaria」(アファリア)を活用することができる。
対応するモバイル端末については「当初はアップル社のiPhoneとRIM社のBlack Berryが主となっているが、年末にかけてAndroid端末のサポートを加速していく予定」(SAPジャパン ソリューション営業統括本部 プラットフォームテクノロジー営業本部 本部長 林幹人氏)。
またSAPジャパンでは、今回の発表を皮切りに、SAPを使ったシステムインテグレーションを展開している国内の販売パートナー/SIにおいても、SUPやAfariaを活用した独自のモバイルアプリケーションが誕生することを歓迎している。SAPアプリとパートナーアプリの両輪によって、基幹システムのモバイル化を加速させようという戦略だ。モバイルエコシステムのパートナーとして、アビームコンサルティング、アイ・ティ・フロンティア、デロイトトーマツコンサルティング、アイ・ピ・エス、富士通、東洋ビジネスエンジニアリング、NTTデータ・ソルフィス、プライスウォーターハイスクーパース、住商情報システム、日立製作所などが挙がっている。
SAPユーザーのモバイル化促進支援サービス3種類も同時発表
今回のモバイルアプリケーションの提供に併せて、SAPジャパンではSAPユーザーのモバイルアプリケーション導入をサポートするモバイル化促進支援サービスも発表した。以下の3つのサービスを「体感」「パイロット」「導入」といった3つの検討フェーズに沿って有償にて提供していく(図表参照)。
(1)Value Prototyping
本サービスでは、まず企業にとって本当に価値あるモバイル活用戦略とそれを実現するエンタープライズ・モバイル・アプリケーションやその機能範囲、利用者といった具体的なモバイル化構想を具現化するワークショップ(Envision Workshop)を実施する。具体的には、SAPが推進役となり、世界的な他社事例や市場傾向、業界規制といった情報を提供しながら、ビジネスシナリオの中でどの部分をモバイル対応すると効果を上げられるかという構想を立案する。そこで導き出した構想を元に、プロトタイプのシステムを開発し、導入後のイメージを体験してもらうことで、企業内の合意を形成しやすくなり、業務利用上の効果を生み出すモバイル導入を促進していく。目安となる提供までの期間は、ワークショップのみで3日間、ワークショップ+プロトタイプ作成で2週間程度を要するとしている。
(2)Custom Development Project
本サービスでは、様々な業種や業態、あるいは顧客がもつ特有の業務プロセスが組み込まれた既存のSAP ソリューション仕様を正しく理解し、これに合わせてモバイルアプリケーションの設計・開発を行うことができる。これにより、モバイルアプリケーションとSAP ソリューションとのシームレスな連携を円滑に行うことができる。(1)と併用することで、(1)で導き出された構想・プロトタイプを確かな手法で導入することが可能になる。所要期間の目安は2ヶ月間。
(3)Starter Pak
本キットでは、モバイルアプリケーションを自社で開発しようとする企業向けに、モバイル開発基盤であるSUPを使ってモバイル開発プロセスやSAPのシステムとの接続方法、画面開発などのスキルトランスファーを行う。顧客が使っているシステム環境を確認し、SUP環境をインストールした開発実習でプロトタイピングを作成する。自社内におけるモバイル開発環境の構築を短期間で行うことができるだけではなく、モバイルアプリケーションの開発スキルを早期に習得することができるという。
図表 SAPジャパンが提供するモバイル化促進支援サービス |