あらゆる社会・経済活動は情報なしに成り立たない。地球上でこの“血流”を支えているのが海底ケーブルだ。私たちがSNSで世界中の人と交流できるのも、Netflixで映画を楽しめるのも、海底ケーブルが張り巡らされているおかげである。
この海底ケーブルはどんな仕組みで情報を送り、誰が敷設しているのか。まず歴史から振り返っていこう。
電信から170年の歴史
実用的な海底ケーブルは、1850年に英仏間で敷設されたものが最初と言われる。当時はモールス符号に代表される電信の用途に使われ、大西洋横断は1858年に、太平洋横断は1903年に開通している。
電話の普及とともに大容量通信のニーズが高まると同軸ケーブルが採用され、1950年代に実用化された。日本では1964年にKDD(現KDDI)が第1太平洋横断ケーブル(TPC-1)を敷設。太平洋横断の国際電話が可能になった(同社Webサイトより)。
光海底ケーブルは1970年代に欧米の通信事業者や電電公社(現NTT)、KDDにより実用化され、インターネット普及とともに数を増やしていく。
NECの鹿島崇宏氏によれば、現在、海底ケーブルの数は世界で約450本、総延長は約140万kmにもなる。米国からのデータ発信が多いことから、大容量ケーブルは太平洋と大西洋に集中し、それぞれ20本ほどが稼働。最近では、新興著しい東南アジア海域も建設ラッシュの状況だ。
NEC テレコムサービスビジネスユニット 海洋システム事業部門 海洋営業統括部 シニアプロフェッショナル 鹿島崇宏氏
太平洋横断ケーブルの建設には「数百億円の費用と、2~3年の期間がかかる」(同氏)。従来は、ケーブル建設・運用ともに通信事業者が中心的な存在だったが、2010年代以降は主役が交代。それまではコンテンツ流通のために海底ケーブルを使う“お客”だったGAFAM等の巨大テック企業が自前のケーブル建設に乗り出し、現在はこちらが主流になりつつある。