アクセンチュアが発表した「Technology Vision 2023」には、「アトムとビットが出会う時」というサブタイトルが付けられている。ここではアトムが現実世界、ビットがデジタルを指す。
アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェア エンジニアリングサービス グループ共同日本統括 マネジング・ディレクターの山根圭輔氏は、「これまでは局所的なデジタルツイン。それをベースにした現実世界の顧客体験は金太郎飴的で、せいぜい十人十色のパーソナライゼーション」と指摘した上で、これからは「あらゆるデータがデジタルツインに存在し、現実世界と融合する。“一人十色”の顧客体験が実現できる」と、“なめらかな世界”では現実世界と遜色のないデジタルツインが実現すると説いた。
アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェア エンジニアリングサービス
グループ共同日本統括 マネジング・ディレクターの山根圭輔氏
だが、生成AIやアップル「Vision Pro」などの新しいテクノロジーによる変革の必要性を認識する企業は96%に上るものの、実際に全社的な変革を達成できた企業は8%に留まるという。そうした状況のなか、4つのテクノロジー・トレンドを挙げた。
データの透明性が競争力の源泉に
4つのテクノロジー・トレンド
1つめは、「デジタルアイデンティティ」だ。山根氏は、従来のサービス主導によるID作成から、ユーザー起点のID生成に転換すると述べた。IDが企業に独占されるのではなく、すべての人が生まれながらに、規格が統一されポータビリティが担保されたIDを持つという世界だ。
その先行事例として、インドで2009年から運用されているデジタルID基盤である「India Stack」による、金融機関による本人確認手続きが紹介された。APIを経由しほぼすべての金融機関で約10分で本人確認が完了するという。
2つめは、「私たちのデータ」、つまり透明性の観点だ。アクセンチュアの調査によると、9割の企業がデータの独占や不透明な利用からの脱却が競争上の差別化要因になると考えているという。データを共有し利活用するためにも、APIが不可欠だ。
山根氏は、インドの同意管理基盤やONDC(eコマースの共通規格化)、会津若松市におけるSAP(業務システム基盤パッケージ)の共同利用などを例に挙げ、自社を中心とした「三方よし」から、APIを活用した“透明性の窓”による消費者・企業・社会の「三方よし」への転換を提言した。