PCだけでなくスマートデバイスまで、エンドポイント(端末)の運用管理に必要な機能をオールインワンで提供する企業が日本に上陸した。スイス・ローザンヌに本社を置くKaseya社だ。同社は2011年6月に日本法人Kaseya Japanを設立、8月4日に設立記者会見を開催した。
2000年創業のKaseya社の運用管理ソリューションは現在、世界32カ国以上で1万2000社を超える企業に利用されており、管理しているエンドポイントの数は1300万以上だという。従業員数は430名以上。北東アジアを統括するジョン・ファーギス氏によれば、「初期の段階では北米や英国、南アフリカなど英語圏を中心に展開していたが、2年前のメジャーアップグレード時に2バイト文字に対応したのを機に、中国、韓国にも進出。そして今回の日本への本格進出となった」という。また、ファーギス氏は、同社は株式非公開企業であり「投資家の気まぐれ」に左右されない語ったうえで、「シリコンバレーのベンチャー企業のように日本に進出して1年で撤退するようなことはない」と、しっかり腰をすえて日本市場に取り組んでいく考えを強調した。
Kaseyaの導入効果例。後述する特徴により、運用管理コストを大幅に削減できるという |
Kaseyaの運用管理ソリューション「Kaseya」の特徴は大きく3つだ。まずは、エンドポイントの運用管理に必要な機能をトータルで提供する点である。資産管理やポリシーマネジメント、ソフトウェア自動インストール、アンチウィルス、パッチマネジメント、電源管理などの機能をオールインワンで備えている。「ほとんどの企業は、J-SOX法や節電などへの対応が必要になる度に、ポイントソリューションを追加してきた。しかし我々の場合はオールインワン。エンドポイントの運用管理に関わる機能は、すべて提供していく」とKaseya Japanの北原信之社長は説明した。
エンドポイントの運用管理に必要な機能をオールインワンで提供 |
最近、エンドポイントの運用管理の領域で必要性が増しているものといえば、スマートフォンやタブレット端末の運用管理、いわゆるMDM(Mobile Device Management)が挙げられるが、このMDM機能も用意する。iPhone/iPad、Android、BlackBerry、Windows Phone 7などを管理できる「KMDM(Kaseyaモバイル・デバイス・マネジメント)モジュール」を9月中に提供開始する予定だ。KMDMモジュールは、資産管理、メール設定、バックアップ/リストア、位置情報トラッキング、紛失・盗難対策、アプリケーション管理(アプリのアンインストール/配布)の機能を備える。現在、提供されているMDMソリューションのほとんどはスマートフォン/タブレット端末のみに対応したものだが、KaseyaではPCとあわせて一元管理できる。
2番目の特徴は、「ITオートメーション」というコンセプトを取り入れていることだ。Kaseyaは管理対象のエンドポイントにエージェントソフトをインストールする仕組みになっており、エンドポイント側で何かエラーが発生した際にはエージェントからセンター側にアラートが送信。そして必要な措置をスクリプトによって自動実行できるようになっている。例えば、HDDの容量がいっぱいになった場合には、ゴミ箱やテンポラリーファイルを自動で削除するなど、数千のスクリプトが用意されているという。「従来の運用管理は故障してから対応する“Break Fix Model”。一方、我々のビジョンはITオートメーションだ。予防・予知により故障を防ぎ、さらに日々の運用を自動化することでオペレーションコストを削減できる」とファーギス氏は語った。
最後の特徴は、LANの外にあるエンドポイントも管理できる点だ。つまり、拠点間ネットワークに組み込まれていない小規模店舗や海外オフィスなどにあるエンドポイントもインターネット越しに管理できる。
Kaseyaの管理画面。同社では10月31日までSaaS版を30日間無料で試用できるキャンペーンを実施する |
Kaseyaの料金はSaaS版の場合で1エンドポイント当たり150~500円程度。KMDMモジュールについては、「まだ決まっていないが、これとは別に料金がかかることになると思う」(北原氏)という。また、オンプレミス版も用意する。ターゲットは、PCが10台程度の中小企業から大企業までと規模によらないが、「特に小売・学校・病院、そしてグローバル展開している企業」を狙っているとのことだ。
Kaseya Japan 社長 北原信之氏 |