<特集>もっと儲かる5Gへ中米韓の5Gマネタイズ KDDI総研が分析する5G先進国動向

5G SA先進国である中国の5Gビジネスは今、どんな状況にあるのか。5G商用化で世界の先陣を切った米・韓の現状とともに、海外市場を幅広くリサーチするKDDI総合研究所に聞いた。

KDDI総合研究所 シンクタンク部門 海外市場・政策リサーチグループの4名に話を聞いた。左から、コアリサーチャーのキム・ダジョン氏(韓国担当)、康佳慧氏(中国担当)、吉田恵理子氏(米国担当)、グループリーダーの神津実氏

KDDI総合研究所 シンクタンク部門 海外市場・政策リサーチグループの4名に話を聞いた。左から、コアリサーチャーのキム・ダジョン氏(韓国担当)、康佳慧氏(中国担当)、吉田恵理子氏(米国担当)、グループリーダーの神津実氏

――中米韓の周波数展開とインフラ整備の状況はどうなっていますか。

 中国移動、中国電信、中国聯通の3社で5Gを開始した後、第4の事業者として中国広電に5Gライセンスと700MHz帯が付与されました。この周波数帯は中国移動と共用しています。

ローバンドの700MHz帯は、少ない基地局数で広いカバレッジができるので、都市部との格差が大きい農村部への5G展開に重点を置いて使われています。中国聯通は、2G/3G/4Gで使っていた900MHz帯を5Gに転用しました。

中国でのメインはミッドバンドで、ミリ波は実験段階です。政府が航空機製造会社の中国商飛グループ(COMAC)にミリ波を割り当ててローカル5Gを構築するプロジェクトがありますが、まだ1社のみです。2023年は、他の企業にも広がる可能性があります。

――米国と韓国の状況は。

吉田 他国と比べると、米国はミリ波が使われているほうですが、それには、ミッドバンドがなかなか手に入らなかったという事情があります。

そのため、一部の都市でミリ波を先に展開し、その後ローバンドを4Gから転用して面的なエリアを整備、2022年からミッドバンドに注力して高速なエリアを展開しました。

神津 韓国はミッドバンド中心です。ミリ波も導入を図りましたが、使いにくいという事情もあって各社が当初計画を達成できず、政府が没収したという経緯があります。

消費者の行動変容を狙う

――中国の5G料金プランの特徴は。

 データ容量別の料金プランが基本です(図表1)。以前は、日本のような動画配信等のコンテンツサービスと組み合わせたプランは少なかったのですが、最近は4社とも出してきています。

図表1 中国移動の5Gプラン

図表1 中国移動の5Gプラン

中国はWi-Fiホットスポットを多用する傾向があり、4Gで動画を視聴する習慣が根付いていません。そこで、5Gとコンテンツサービスを低価格なキャンペーンで提供することで、消費者の“大容量データを使う習慣”を育成する戦略を採っています。収益を少し犠牲にしながら、消費者に行動変容を促している段階です。4G/5G通算の月間トラフィック量は15.2GBですが、5Gでは21GBと増大傾向が見て取れます。

――ARPUは伸びていますか。

 中国移動はモバイル全体のARPUが52.3元で、5GのARPUは85元(ともに2022年第2四半期)です。他の3社と比べても高いのですが(中国電信の5G ARPUは52.7元)、これにはコンテンツサービスとのセット提供が影響しています。音楽や動画視聴といった日常的に利用するものに加えて、NBAやサッカーW杯等の有料スポーツ中継に力を入れており、それが大きな収益源となっています。

神津 どの国も料金プランは徐々に多様化しています。韓国では最近、シニア向けや子供向けプランができました。5G開始当初は、データ容量別プランの種類も少なかったのですが、政府の指導によって、細分化されてきています。

吉田 米国ではベライゾンが、周波数でプランを分けています。ミッドバンドとミリ波が使える上位プランで収益化を狙う戦略です。

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