総務省「Wi-Fi 7作業班」の報告案まとまる、子局(端末)間通信のサポートも焦点に

無線LANの次世代規格「Wi-Fi 7(IEEE802.11be)」の国内導入に向けて、総務省・情報通信審議会に設けられた5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班で議論が続けられている。2023年6月28日に開かれた第10回会合では、これまでの検討内容を踏まえ、他の無線システムとの共用条件や技術的要件等をまとめた報告案について議論。7月からの審議を経て、9月に情報通信技術分科会で答申が出される予定だ。

無線LANの次世代規格「IEEE802.11be」の標準化は、2024年12月の完了が予定されている。業界団体であるWi-Fi Allianceはすでに「Wi-Fi 7」の認証名で認証プログラムの準備を始めており、2023年末から2024年初めにかけて認証プログラムがスタートする見込みだ(参考記事)。

また、ドラフト版の仕様に準拠するかたちで2022年以降、Wi-Fi 7対応チップやルーター製品の発表も相次いでおり、日本国内への導入、利用解禁への期待が日々高まっている。

この新規格の国内導入に向けては、技術的条件や、他の無線システムとの共用条件等の検討が2022年10月から本格化。2024年度にWi-Fi 7の使用を可能にすることを目指して、現在、情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会の「5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班」で検討が行われている。

そして今回、同作業班の報告(案)がまとまった。本稿ではその要点を紹介する。なお、報告(案)ではIEEE802.11be(Wi-Fi 7)を「広帯域無線LAN」と呼んでいるが、以下、Wi-Fi 7の名称で記載する。

Wi-Fi 7とWi-Fi 6Eはどこが違う?

まず、Wi-Fi 7の特徴を整理しておこう。

Wi-Fi 7は、従来規格のWi-Fi 6まで使われてきた2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯の周波数帯を使う。この点は2022年から利用可能になった「Wi-Fi 6E」と同じだが、さらに複数の新機能が実装される(下図表)。

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の比較

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の比較

1つは、チャネル帯域幅の拡張だ。従来(最大160MHz幅)の2倍に当たる320MHz幅を使った通信が可能になる。

2つめは変調多値数の拡張。Wi-Fi 6Eの1024QAMから4096QAMに増やすことで、1シンボル当たりの伝送レートが10ビットから12ビットへと1.2倍に増える。なお、この4096-QAMはオプション機能となっている。

さらに、Wi-Fi 6Eにはなかった「マルチリンク機能」が加わる。OFDMA伝送において無線通信を行う際の周波数単位であるRU(Resource Unit)を1ユーザーに複数割り当てるものだ。1ユーザー当たりの伝送レートを高速化できるほか、電波干渉を受けるRUを避けて選択することで、通信の安定性を高める効果もある。

これらの効果を重ね合わせることで、Wi-Fi 6Eと比べて大幅なスループット向上が期待できる。マルチリンク機能を3リンク(320MHz×1、160MHz×2)と想定し、チャネル帯域幅と変調多値数の効果を合わせた場合、スループットはWi-Fi 6Eの約4.8倍となる。

6GHz帯の無線LANの出力については、SPモード(Standard Power)、LPIモード(Low Power Indoor)、VLPモード(Very Low Power)の3つが規定されている。国内ではLPIモードとVLPモードが使用可能で、企業や家庭等ではLPIモードが主流として使われることが想定される。より低い電力で動作するVLPモードは、屋外での使用も可能だ。

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