「同じデータを見て同じ判断をしていたら、差別化もできなければ利益も生み出せない。新しいビジネス創出のために、オルタナティブデータが活用され始めた」。オルタナティブデータ推進協議会 理事の東海林正賢氏はこう語る。
オルタナティブデータ推進協議会 理事 東海林正賢氏
ここ数年、オルタナティブデータへの注目が急速に高まっている。かつて機関投資家は、企業財務情報や株式情報、金融統計といった情報をもとに、投資判断を行ってきた。しかし今はこうしたトラディショナルデータだけが判断材料ではない。オルタナティブ(代替)データの活用が進んでいる。
オルタナティブデータとは、IoTやスマート化の進展に伴い、新たに利用可能になったデータ群を差す。具体的には、小売店などのレジで商品を販売した際に記録されるPOS売上データや位置情報・交通量などのトラフィックデータ、産業機器などのIoTデバイスから得られる稼働状況データなどが挙げられる(図表1)。
図表1 オルタナティブデータの定義
オルタナティブデータの特徴の1つは、リアルタイム性の高さだ(図表2)。企業の決算発表から分かるのは、数カ月前の企業の状況である。しかし例えば携帯電話事業者が提供している人流データを使って、工場に出入りする人の流れを分析すれば、今現在の工場の稼働率を推測できる。あるいは、衛星写真を用いて、店舗の駐車場の埋まり具合を分析すれば、今現在の売上状況を推測できる。映画予約サイトのクローリングにより映画の予約状況を掴み、先んじて業績予測をしている例もある。機関投資家による企業の業績予測の材料として、オルタナティブデータは有効なのだ。
図表2 オルタナティブデータの特徴