営業マンの業務効率向上という視点では駄目
このようにモバイルソリューションの提供に力を入れているSAPだが、同社では企業がモバイル化を推進するメリットについて、どう捉えているのだろうか。
それを説明するため、講演では自動車向け電子部品業界を例にとったデモも行われた。営業マンは顧客との面談のなかで、新モデルの概要や生産予定台数、希望納期など様々な情報を入手する。だが、それがシステム側に入力されるのは、営業マンが外出先から戻り、さらに「この情報はシステムに入力していいだろう」などと判断した後となる。
ERPやSCMなど業務システムのリアルタイム化はどんどん進んでおり、経営や受注などの現状がより正確に把握できるようになっているが、人の入力の部分が大きなボトルネックになっているわけだ。「モバイルデバイスを活用することで、人の情報処理もなるべくリアルタイム化できることがモバイル化の最大のメリット。これにより、リアルタイムシステムがより生きてくる」とデモを行ったSAPジャパンの井口和宏氏は語った。
iPadを使った、自動車向け電子部品業界を想定したデモ。営業マンが顧客などとの面談で得た情報を即座にシステムに入力することで、情報のリアルタイム化をさらに推し進められる |
また、阪尾氏も「モバイルデバイスを活用する人の業務効率という視点では、なかなか導入には踏み切れないと思う」としたうえで、「営業の業務効率化というよりは、営業の情報がシステムに入ってくることで生産計画のサイクルが早くなるといった視点が重要」とした。SAPでは、どのような業務でモバイルを使えばいいのかなどを一緒に考えるワークショップ等の支援サービスも提供しているという。