写真:iStock / metamorworks
「IOWN1.0はAPNが中心。2.0の目玉は、そのAPNの上で『光ディスアグリゲーテッドコンピューティング』インフラを実現することだ」
NTT IOWN推進室長の川島正久氏はそう語る。NTTは2025年にIOWN2.0を商用化し、大阪・関西万博でこれを披露する計画だ。
IOWN1.0が商用化され、今後、複数の拠点を光のみでつなぐAPNが全国へ広がる。これに続くIOWN2.0の焦点はコンピューティングの変革だ。
光のみで情報伝送する「光電融合」がコンピューターの中へ入っていく。
「IOWN1.0はサイトtoサイト。2.0では『メモリtoメモリ』でデータが飛び交う。複数のコンピューターをつなぎ、厳しいリアルタイム性の条件下で膨大な量の演算処理を行えるようになる。かつ、電力も削れる」
IOWN2.0は「無茶」を可能に
DCや企業の拠点をゆらぎなしの超低遅延ネットワークでつなぎ、リアルタイム処理を可能にすることがIOWN1.0、つまりAPNの最大の特徴だ。
データが相手に届くタイミングを保証できない現在のTCP/IPネットワークでは不可能なレベルのリアルタイム処理が可能になる(図表1)。
図表1 IOWN技術によるコンピューティングの進化
この「確定遅延」がどこでも使えるようになれば、コンピューター内部も変化すると川島氏。
「再送やフロー制御の処理は不要になり、メモリからメモリへデータを“転写”できる。様々なコンピューターをつないだシステム全体で、処理にかかる時間をマネージできるようになる。リソースや電力の無駄もなくなる」
これが、冒頭にある「光ディスアグリゲーテッドコンピューティング」インフラだ。
このインフラが必要とされるのが、VR/ARやデジタルツイン、メタバースなど、実空間とサイバー空間を融合させるアプリケーションだ。
例えば、全国各地のユーザーの視野や周辺環境の情報を集め、その内容を解析し、メタバース空間に集約して、合成した映像をまた各地のユーザーへと送り返す。こうしたアプリを大規模に実行しようとすれば、1台、1拠点のコンピューティングでは到底間に合わない。都市レベルのデジタルツインやCPS、膨大なデータとAIを駆使する地球レベルの環境解析等も同様だ。
つまり、複数のコンピューターを確定遅延でつなぎ連携できる情報通信基盤がなければ「アプリやサービスが設計できない」時代が間近に迫っているのだ。
「超リアルタイムで演算量も膨大、かつ省エネと、我々は無茶・難題の中でコンピューティングをすることになる。それをやるのがIOWN2.0」だ。