NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦氏
――IOWN初の商用サービスとなる「APN IOWN1.0サービス」の提供が3月16日に始まりました。2019年5月にIOWN構想が発表された際には、2030年頃の実現を目指した構想だったわけですが、だいぶ前倒しで現実のものとなりました。
川添 IOWNが目指しているのは、本当に大きな変革です。そのため2019年5月の段階では、IOWNが広がるのはおそらく2030年頃だと予想していました。しかし、この間、非常に重要な出来事が起きたことから、提供できるところからリリースしていこうと、今回のAPN IOWN1.0の開始に至ったのです。
1つはコロナです。人々の生活や仕事の仕方が変わり、NTTに関連するところで言えば、ネットワークの利用量が圧倒的に増えました。
また、その後には、ロシア・ウクライナ戦争が起こりました。これに伴い、電気料金が高騰し、多くの企業が計画的に利益を出せない等の事態に向き合っています。
このように大きな課題に次々と直面したこともあって、「IOWNをもっと早くに実現すべきではないか」という声をいただき、我々自身もそう感じたわけです。IOWNを発表した当時は、ある程度すべてが出来上がってからリリースする考えでした。
――当初の想定を上回って、IOWNへのニーズが高まっているということでしょうか。2020年1月に米国で設立したIOWN Global Forumにも今年2月時点で117の組織・団体が参画しています。
川添 間違いなく期待以上です。おかげさまで多くの方々にIOWNを理解していただいています。我々NTTだけでは計り切れないIOWNの可能性を感じて、積極的にIOWNに関わろうと参画されている企業が多いのではないかと思っています。
――具体的には、どのような期待が多いのでしょうか。
川添 やはり共通しているのはエネルギーの問題です。電気料金は世界中で高騰していますから。
もう1つは低遅延です。いろいろな価値を遠隔から提供するにあたって、遅延のないことが求められている産業が今や多いのだと感じています。