JTOWERは2023年4月17日、令和4年度総務省事業「ベトナム社会主義共和国における屋内通信インフラシェアリング実証試験の請負」に請負事業者として、2023年1月~2023年3月の期間、ベトナム国内初となる5G屋内インフラシェアリングの実証試験を実施したと発表した(参考記事:「2026年度までに屋内インフラシェアリング1000物件を目指す」JTOWER田中社長|BUSINESS NETWORK)。
実証実験では、ベトナムでの5G早期普及に向け、通信トラフィックの多い商業施設「Parkson Saigon Tourist Plaza」(ホーチミン市)にて5G通信環境をインフラシェアリングで構築・運用した。さらに5G基盤を活用したXRコンテンツを提供し、大容量データの利活用に関する検証を実施。一連の実証試験を経たうえで、インフラシェアリング導入によるコスト、電力等の削減効果を定量的に明らかにした。
5G屋内インフラシェリング システム構成図
今回の実証試験の環境構築および運用は、JTOWERのベトナム事業を担う子会社Southern Star Telecommunication Equipment Joint Stock Companyにて行い、XRコンテンツの提供に向けたソリューションの構築・運用は、KDDIの海外現地法人であるKDDIベトナム ホーチミン支店が担った。
実証にはベトナムの携帯通信事業者2社が参画し、すでに設置されている4Gのネットワーク設備に加え、5G通信環境をインフラシェアリングにて構築した。5G通信の通信速度、遅延時間について測定し、各フロアの既存4G通信の通信速度、遅延時間をベンチマークとして比較した結果、通信速度は10倍以上、遅延時間についても30%前後の向上が見られた。
実証結果に関する関係者へのヒアリングを行ったところ、Parkson Saigon Tourist Plazaの施設管理者からは、特に5G通信の通信速度について高い評価を得られ、実証に参加した通信事業者2社からもインフラシェアリングの有用性、通信速度について高い評価を得られたという。
今回の実証で構築した屋内5G通信環境下にてXRコンテンツを提供し、大容量データのダウンロードに関する利便性の向上も評価した。「au XR Doorソリューション」が設置されているParkson Saigon Tourist Plaza1階のMUJI PARKSON LE THANH TON店にて、4G通信、5G通信それぞれについてコンテンツのダウンロード時間を計測した結果、ユーザーが最初にアプリケーションをインストールする際にかかる時間は、すべてのケースで半分以上短縮されており、大幅な改善が見られた。
店内のアンテナ設置イメージ
また、実際の運用を通じて、インフラシェアリングを行わなかった場合に想定される設備投資費用・運用維持費用・消費電力をどの程度削減できたのか定量的に明らかにした。
実証で要した設備投資額、消費電力を基に、携帯通信事業者2社が個別に通信環境整備を行った場合と比較し試算を行った結果、工事費、設備費等を含む設備投資額および運用維持費用は約1/2、消費電力についても約1/2に削減が可能となることが明らかになった。
インフラシェアリングを活用した5G推進に向けては、5G設備の価格、電気料金、設備設置ための機械室の賃料等を鑑み、トラフィックの多いエリアに絞った通信設備の設置や3社でのシェアリングを行うことが有効であると考えられるとしている。