SDメモリカード(以下SDカード)が出現してから10年。ノートPCからデジカメ、携帯電話、スマートフォンなど多くのモバイル機器に採用され、小型メモリカードにおける世界シェアは約90%を獲得するなど、事実上のデファクトスタンダードとなっている。そんなSDカードの将来を決定するSD Association (以下SDA)では、次世代規格の策定において無線LAN機能や認証機能を盛り込み、ホームネットワークやクラウドコンピューティングへの対応を図ろうとする動きが現実味を帯びてきた。そこで本稿では、SDAで進められてきたSDカード規格を総括するとともに、標準化ロードマップをもとに次世代のSDカード規格を読み解いていく。
SDAでの標準化の経緯
SDAはSDカード、およびSDカードを応用するホスト機器、周辺機器の標準化、普及促進を目的に、2000年1月に米国で設立され、現在、約1100社の企業が加盟する国際的な標準化団体である。SDAの主な会員は、メモリカードベンダ、CE機器ベンダ、携帯電話ベンダ、半導体チップセットベンダ、ソフトウェアベンダなど多様な会員で構成されている。筆者は2002年からTechnical CommitteeのCo-chair(共同議長)として、現在まで標準化活動に携わっている。
図1にSDAの組織とSDカードの種類を示す。SDAは非営利の標準化団体で、Board(役員会)の下にTechnical Committee、Compliance Committee、Marketing Committeeの委員会があり、SDカードや応用機器の標準化、普及促進活動を展開している。SDカードの外形は、標準サイズのSDカード、miniSDカード、およびmicroSDカードの3種類から成る。標準サイズのSDカードは、デジタルスチルカメラなどのCE機器で使われ、miniSDカードは以前、携帯電話で使われていたが、現在はmicroSDカードに置き換わっている。
図1 SDAの組織とSDカードの種類 [クリックで拡大] |
また、容量に応じて、2GBまでのSD、32GBまでのSDHC、2TBまでのSDXCの3種類がある。容量に応じてSDロゴを変えた理由は、容量別にファイルフォーマットが異なるためである。2GBまでのSDはFAT12/16、32GBまでのSDHCはFAT32、2TBまでのSDXCはexFATを採用した。exFATを採用した主な理由は、FAT12/16/32の最大ファイルサイズが4GBで制限されることと、大容量SDカードのマウント時間(空スペースの計算など)が増加する問題を解決すること、また動画の記録に適したファイルフォーマットを提供することである。
ホスト機器とカードの互換性に関しては、SDHCホストはSDHCカードと下位のSDカードに対応し、SDXCホストはSDXCカードと下位のSDHCカード、およびSDカードにも対応し、ホスト機器がカードの下位互換性を提供している。
SDカードがこの10年間で国際的なデファクトスタンダードとして成功した理由は、大容量化、高速化など、市場のニーズを先取りした規格をいち早く実現し、商品化できたことと、ファイルシステムやアプリケーションフォーマット、ホストコントローラなど、カード以外も含めて幅広く標準化を実現し、多くのホスト機器や周辺機器がSDカードに対応できるよう努力をしてきたことが挙げられる。民生市場の記録媒体の成否は、その応用機器の数量で決まっていくことは明らかである。
また、記録媒体の市場での寿命は、価格がリーズナブルであることはもちろんであるが、大容量化、高速化、小型・軽量化、低消費電力化などの市場のニーズに応じて、長期にわたって進化し続けることができるかどうかが重要である。