英ロンドンで開催された「Open Mobile Summit」で2011年6月8日、欧州のオペレータ3社がパネルでアプリストア時代のオペレータの役割について話し合った。パネルではまた、ネットワーク効率化の問題も指摘された。ここでは、アプリケーション開発者に呼びかける必要があるということで見解が一致した。
パネルに参加したのは、Orangeのコンシューマ戦略担当副社長、Daniel Gurrola氏、Telefonica O2のモバイルデータディレクター、Tanya Field氏、3の製品ディレクター、Charlotte Spencer氏、ユーザーエクスペリエンスを測定するサービス事業者Carrier IQ副社長のAndrew Coward氏。モデレータを務めたのは調査会社Disruptive Analysisの創業者、Dean Bubley氏。
冒頭でオペレータ3社はアプリストアに対する自社アプローチについて語った。3社とも、単にサードパーティのアプリを自社ネットワーク上で提供するだけでなく、アプリから収益を得るためにエコシステムに参加していくという姿勢をとる。
「もともと、オペレータは自社でアプリストア的なものを提供してきた」とOrangeのGurrola氏。着メロやゲームなどをダウンロードできるサービスで、各社がそれぞれ開発者プログラムを提供していた。もちろん、Nokiaなどの端末側も開発者プログラムを持っていた。これが2007年以前の図だ。「だが、Appleがアプリの発見から購入まで、エクスペリエンスを統合することでゲームを変えた」とGurrola氏。6万人という「オペレータとしては最大級の」開発者コミュニティを持つというOrangeでは、約2年前にアプリストアを戦略的分野と位置づけ、ディストリビューションや発見の部分で価値を提供する戦略を進めているという。
3のSpencer氏も同様に、顧客にはディストリビューションと発見の部分でサポートし、開発者には必要なサービスを提供すると語る。「どうやって自分たちの役割を明確にするか。収益のために、意味のある投資をするかを常に社内で話し合っている」とSpencer氏。ここで重要視しているのは、オペレータが蓄積してきた顧客情報の活用だという。
3社はともに「エクスペリエンスの提供」を口にしたが、具体的には、クロスプラットフォーム環境でユーザーが必要とするアプリを提供する、ナビゲーションを支援する、などが挙がった。O2のField氏は、「クライアントベースのサービスにより、個々のユーザーにカスタマイズして適切なアプリを提案したり、プロモーションの提供などが考えられる」とも述べた。
左からOrangeのGurrola氏、O2 TelefonicaのField氏、3のSpencer氏、Carrer IQのCoward氏、手前がモデレータのDisruptive AnalysisのBubley氏 |
「無料モデルに移行しつつある」
アプリの利用については、Carrier IQのCoward氏はアプリストアの時代でもプリロードの重要性を強調した。ある調査で、Facebookアプリがデバイス出荷時にプリロードされている場合、利用率は40%だったのに対し、プリロードされていない場合は5%だったという。
無料のアプリが多いが、どうやって収益にしていくのかという質問に対しては、「無料モデルに移行しつつある。ここでは顧客ベースを増やし、どうやって顧客をマネタイズするかの戦いになる」と3のSpencer氏は回答した。
OrangeのGurrola氏はオペレータのコラボレーションも必要だ、として、2010年に立ち上がった「Wholesale Application Community」の取り組みを挙げた。3社ともWACに参加しているが、3のSpencer氏は「今後の課題はスケール」と述べた。
モデレータのBubley氏は、アプリでのオペレータができることとして、1)サードパーティのアプリストアの提供、2)開発者にAPIやツールを提供、3)自社でアプリストアを構築する、または他社のアプリストアのカスタマイズ、4)どのネットワークでも動くOTT(Over The Top)アプリの開発などを挙げた。