――　モバイルネットワークインフラの仮想化に長年取り組んできた2社が今回、新たなソリューションを共同開発しました。その背景から聞かせてください。

野地真樹氏（デル・テクノロジーズ プリンシパル・システム・アーキテクト。以下、野地）　テレコム業界では今、RANの仮想化が熱心に議論されており、実際にいくつかの地域で展開が進んでいます。

従来のRANは専用システムとして作られ、特定のベンダーがハードウェアとソフトウェア、サポートまで含めて一貫して提供していました。これに対して、通信事業者様は「特定のベンダーにロックインされたくない」「汎用性の高い製品を組み合わせることで自由度を高めたい」、そして「汎用製品を使うことでコストを下げたい」というニーズを持つに至りました。

RANの仮想化とは、今まで単一のベンダーから買っていたハード、ソフト、サービスをディスアグリゲート（分離）することで自由な組み合わせを可能にすることです。これにより、コストも最適化できるようになります。

しかし、仮想RANには問題もあります。自由な組み合わせで作ったRAN全体の性能や品質、製品のライフサイクル管理について誰が責任を持つのか、そのマネジメントが難題となります。導入時の検証作業やデリバリーに時間がかかり、展開後のサポートについても、ハードとソフトで窓口が分かれることでトラブル発生時の切り分けや復旧に時間がかかってしまいます。

デル・テクノロジーズ プリンシパル・システム・アーキテクトの野地真樹氏（右）と、
ウインドリバー 代表取締役社長の中田知佐氏

－　ウインドリバーと共同開発した「Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind River」は、この課題解決にフォーカスしたソリューションであると。

中田知佐氏（ウインドリバー 代表取締役社長。以下、中田）　通信事業者様はこれを採用することで、仮想RAN導入時の工数削減と期間短縮が可能になり、また、デル・テクノロジーズから迅速なサービスが受けられるようにもなります。

野地　Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverは「Dell PowerEdge」サーバーと、ウインドリバーのクラウド基盤「Wind River Studio」（参考記事）を一体化したものです。つまり、この2つを事前にインテグレーションして検証し、デル・テクノロジーズの工場でクラウド基盤をインストールした上でお届けします。

ハードウェアとクラウド基盤が一体化されたかたちで提供されるので、この部分の検証作業は不要になります。通信事業者様にとって、仮想RANが扱いやすいものになるでしょう。

図表1　Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverの構成

中田　仮想RANのデリバリーや、その後の運用についても一元的に行えるようになります。これも大きなメリットですね。

野地　弊社が一貫したサポートを提供します。ハードウェアに関してもソフトウェアについても、我々が「1つの窓口」になることで迅速にトラブルを解決できます。

ライフサイクル管理の面でもメリットがあります。こうしたインフラ領域の技術は常に進化しており、ライフサイクルも短いので、継続的に検証を続けていかなければなりません。Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverであれば、常に検証済みのクラウド基盤を使うことができます。