「今年度後半から2023年度に、ローカル5Gが本格的な商用化フェーズに入っていくと期待している。“制度の柔軟化”もあって、いよいよ場が整ってきた」
11月24日に開催された「ローカル5Gサミット2022」の基調講演で、総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課企画官の入江晃史氏はそう述べた。「総務省として何としても普及を進める」と講演を締めくくった同氏は、技術・制度・コストの3つの面でローカル5G普及を阻むハードルが存在すると指摘。制度改正や、関連ソリューションを提供するベンダーの努力によって、それが取り除かれつつあることを強調した。
「上り映像伝送」に焦点
技術面では、令和2年度から毎年実施している「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」で、ユースケース開拓とともに設計・構築技術とノウハウが蓄積されてきた。さらに、そこで顕在化した課題やニーズについて、ローカル5G制度の改正とベンダーの技術開発によって対応が進んできている。
代表例が「準同期運用」だ。上り通信の高速化を実現するため、同期運用(上:下=2:7)よりもアップリンクのリソースを増やす運用法を世界に先駆けて導入。2021年度以降の実証で性能測定・確認が行われた結果、すでに実用レベルになっている。
同サミットで講演したNTT東日本ビジネス開発本部の渡辺憲一氏によれば、同社の「ギガらく5G」では、上下比率が4:4の「準同期TDDパターン1」で上りが最大466Mbpsと、同期運用(上り最大230Mbps)の2倍に向上。「ラボだけでなく、お客様先での検証でも400Mbps程度が安定して出せている」
キャリア5GやWi-Fi 6では対応できない無線通信ニーズに応える意味で、この上り高速通信は、まさにローカル5Gの肝となる。
ビジネス現場から映像を収集して監視や遠隔支援、AI解析に用いるケースにおいて、400Mbpsの速度があれば、4Kカメラ映像を10本以上使っても何ら支障がない。「暗視カメラやレーダーなど、カメラの種類も増やせる。さらに音響などの情報も使えるので、現場を把握するための手段を増やせる」と渡辺氏はその効果を強調する。例えば、建設現場や事故現場の状況を把握したい場合、現場を多数の映像で捉え、かつ音声等の情報も付加することで、降雨・降雪が現場作業にどの程度影響しているのか、事故の破損がどの程度かも詳細に確認できる。ローカル5Gで最大のニーズである映像伝送での活用に弾みがつくのは間違いない。