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5Gの次の世代のモバイル通信システム「Beyond 5G(6G)」で期待されている100Gbpsから1Tbpsという超高速通信を実現するには、数GHz 幅の帯域を確保可能な100GHzを超える非常に高い周波数領域「サブTHz帯」の利用技術の確立が不可欠となる。
無線通信向け測定器をグローバルで展開する独ローデ・シュワルツは、このサブTHz帯の研究開発に、意欲的に取り組んでいる企業の1社だ。
同社の取り組みの1つに、通信分野では欧州最大の研究機関であるフラウンホーファーハインリッヒ ヘルツ研究所(HHI)、ベルリン工科大学と2021年に共同で実施した、ドイツ・ミュンヘン本社での158GHzと300GHzの2つのサブTHz帯周波数を用いた無線伝搬試験がある。
固定した送信装置から送出する信号を、受信装置を実験エリア内の様々なポイントに移動させながら受信することで、直接波と反射波の強さ、タイミング、方向などを計測し、その伝送特性を明らかにする「チャネルサウンディング」と呼ばれる試験だ。本社研究棟の吹き抜け空間を利用した屋内試験と、2の研究棟に挟まれた通路を両側にビルが立ち並ぶ通りに見立てた屋外試験の2つを行った。
試験を担当したローデ・シュワルツ テクノロジーマネージャーのタロー・アイヒャー氏は、このチャネルサウンディングで得られた伝送モデルが、6Gの仕様策定の基礎になると説明する。
「6Gで新しい周波数を使用するにあたっては、周囲の環境によって、通信がどのような影響を受けるかを理解する必要がある。でなければ、物理レイヤの仕様は決められない」
直進性が極めて高く、障害物の影響を受けやすいサブTHz帯では、反射波の振る舞いの解析が実用化の鍵を握る。
アイヒャー氏は158GHzや300GHzなどのサブTHz帯の周波数について、「工場などの屋内環境が中心になると思うが、50m程度の距離では十分に実用的な通信が可能になる」と見ている。
ローデ・シュワルツ テクノロジーマネージャー タロー・アイヒャー氏
ミュンヘン本社での試験には、HHIが開発した通信モジュールやローデ・シュワルツのテスト装置を活用したオリジナルの試験装置が使われたが、ローデ・シュワルツでは、こうしたサブTHz帯でのチャネルサウンディングなどの伝送試験を、より手軽に実施できるレディメイドの無線伝搬試験ソリューションの展開に力を入れている。
その1つが、2023年第1四半期の発売が予定されている、サブTHz帯の中でも 6Gでの利用が有力視されているDバンド(110~170GHz)対応の試験ソリューション。その核となるのが、同社が「フロントエンド装置」と呼ぶ新タイプのアップ/ダウン周波数コンバーター「R&S🄬FE170ST/FE170SR」である。
このソリューションは、ローデ・シュワルツのベクトル信号発生器「R&S🄬SMW200A」とR&S🄬FE170STのセットを送信装置、シグナル・スペクトラム・アナライザ「R&S🄬FSW」とR&S🄬FE170SRのセットを受信装置として利用するもので、既存の試験装置に比べてシンプルな機器構成と、簡便な操作性を実現している。この新しいソリューションの特徴を見ていこう。