9月に開催された総務省「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」において、条件付きオークションを導入する方針案が示された。
最高額を提示した事業者に周波数を割り当てる電波オークションは1990年代以降、各国で採用されてきた。国内でも幾度となく議論にのぼり、民主党政権時代にはオークション導入を可能とする電波法改正案が国会に提出されたが、政権交代により廃案となった経緯がある。
日本で長年用いられてきたのは「比較審査方式」だ。エリア展開やMVNOへの取り組みなど複数の基準から各事業者の事業計画を審査し、より優れた計画を提出した事業者に周波数を割り当てる。2019年の電波法改正以降の5Gなどの周波数割当においては、従来の比較審査項目に、周波数の評価額を追加して総合的に審査する「総合評価方式(特定基地局開設料制度)が導入されている(図表1)。
図表1 総合評価方式(特定基地局開設料制度)の概要
今後は周波数を割り当てる際、総合評価方式と条件付きオークションのいずれかを選択することが可能となる。
海外では条件付きが主流
条件付きオークションは、電波の経済的価値を反映しつつ、市場動向なども勘案して政策目標を達成するために必要な項目を条件として課すものだ(図表2)。
図表2 諸外国の携帯電話用周波数の割当方式の分類
海外では当初、純粋オークションに近い形態で実施されていたが、2000年に英国やドイツで行われた3Gオークションで落札価格が約1兆円まで高騰。落札した事業者が多額の負債を抱えたため、3G導入の大幅な遅れにつながったといわれる。
3Gでの失敗を踏まえ、英国やフランス、ドイツなど欧州各国では現在、「参加する事業者数に対し十分な周波数枠を確保する」「オークション後の周波数保有総量の上限(周波数キャップ)を設定する」といった条件を付けたオークションが主流となっている(図表3)。これにより、落札額の過度な高騰を抑えることに成功しているという。
図表3 諸外国の主なオークションでの落札額の推移