<特集>NTN最新動向 非地上系ネットワークは通信市場をどう変革するか?LoRaWANで衛星通信 新変調方式で通信距離3万5000kmに

新変調方式「LR-FHSS」で機能が大幅に進化したLoRa。エリア未開拓の地域を人工衛星を使ってカバーし、IoTの活用により課題を解決する取り組みが始まっている。

LPWA規格の1つ、LoRaの機能が大幅に進化する。

2021年にLoRa Allianceで新たに仕様が策定された変調方式「LRFHSS:Long Range Frequency Hopping Spread Spectrum」は、1台のゲートウェイに接続できるエンドデバイスの数が従来の数百~数千から、数千~数十万へと増やすことが可能となる。

また、通信距離も高軌道衛星の飛行高度である3万5000kmまで伸ばすことができ、かつ高速移動体との通信も行えるようになる。

これらの進化によりLoRa Allianceが実現しようとしているのが「スマートプラネット」構想だ。

LoRaWANは世界約170カ国の通信事業者に採用されており、数あるLPWAの中でも普及が進んでいる規格の1つ。それでも地球全体で見ると、カバーしているのは地表の10%程度にすぎない。残る90%は海上や砂漠、山間部、密林など、物理的にネットワークを構築するのが難しかったり、利用者がほとんどいないため費用対効果が見込めないエリアだ。そこで、人工衛星を使って軌道上からLoRaWANのネットワークを張り巡らせることで、地球全体をIoT化することを目指すのがスマートプラネットだ(図表1)。

図表1 LoRa Alliance「スマートプラネット」のイメージ

図表1 LoRa Alliance「スマートプラネット」のイメージ

年内に商用サービス開始

LoRa Allianceには、2016年に英インマルサットなど衛星通信事業者がメンバーに加わり、衛星通信の可能性を探ってきた。

「新変調方式により、地上に配置された多数のセンサーから、高軌道衛星にダイレクトにデータを送ることが可能になる」とセムテック・ジャパン ディレクター 事業開発担当でLoRa Alliance Japan chairmanの植松健太郎氏は話す。

セムテック・ジャパン ディレクター 事業開発担当 LoRa Alliance Japan chairman 植松健太郎氏

セムテック・ジャパン ディレクター 事業開発担当
LoRa Alliance Japan chairman 植松健太郎氏

そうした中で、年内にもスマートプラネットの取り組みがいよいよ本格化する。

アイルランドの衛星通信事業者エコスター・モバイルが、高軌道衛星を使った商用サービスを開始する予定だ。石油や天然ガスパイプラインのメーターのスマート化、船舶の運航管理、ダムの遠隔監視、野生動物の個体数管理など用途は多岐にわたる。

英Lacuna spaceや仏ユーテルサットも人工衛星を活用したサービスを提供する予定で、相互にローミングする計画もあるという。

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