山に登っても船に乗ってもスマートフォンが圏外にならない。こんなところに携帯の基地局なんてあったっけ?――。
そんな便利な世界をいち早く実現しようと、楽天モバイルが進めているのが「スペースモバイル」プロジェクトだ。
高度700kmを飛行する低軌道衛星(LEO)と地上のLTEスマートフォンが直接通信することで、日本から“圏外”を消滅させることがこのプロジェクトの目的だ。NTN(非地上系ネットワーク)のまさに先駆けとして、2023年以降のサービス提供開始を目指している。
9月に試験衛星打上げ
楽天モバイル 衛星通信部 部長の松井譲氏はスペースモバイルが実用化された後の世界をこう展望する。
楽天モバイル 衛星通信部 部長 松井譲氏
「専用端末を使うこれまでの衛星通信システムとは異なり、今使っているスマホでそのまま衛星と通信できる。ユーザーはおそらく気がつかないまま、地上ネットワークの圏外でも『普通に楽天モバイルが使えている』状態になる」
楽天モバイルの人口カバー率は現在97%超に達している。ただし、これが99%になっても日本の総面積に対するカバー率は70%に過ぎない。残る3割を一気に埋めることがスペースモバイル計画の第1の目的だ。
もう1つの目的は災害対策である。
震災等で地上ネットワークが壊滅的な打撃を受けても、衛星から直接電波を届けられれば迅速に通信を回復し、復旧作業を後押しできる。楽天モバイル 技術戦略本部 副本部長の藤田祐智氏は、「持って逃げたスマホで通信できたら非常にメリットがある。社会貢献としての意義も大きい」と話す。
楽天モバイル 技術戦略本部 副本部長 藤田祐智氏
このプロジェクトは、楽天グループが出資する衛星通信会社AST Space Mobileと共同で取り組むものだ。今年9月には、試験衛星「BlueWalker3」の打ち上げを控えている。